ICレコーダーの録音は、刑事訴訟法において伝聞証拠として扱われる可能性がありますが、状況によっては証拠能力が認められることもあります。
伝聞証拠とは?
伝聞証拠(でんぶんしょうこ)とは、刑事訴訟法において「供述者が公判廷で証言していない供述を証拠として用いること」を指します。つまり、供述者本人が直接証言していない内容を、第三者の話や書面などを通じて証拠とする場合です。
伝聞例外とは?
原則として証拠能力が否定される伝聞証拠について、一定の条件を満たす場合に限り、例外的に証拠能力が認められるケースを指します。刑事訴訟法では第321条〜第328条にかけて詳細に規定されています。
主な伝聞例外の類型(刑事訴訟法321条〜)
| 条文 | 内容 | 要件の一例 |
|---|---|---|
| 321条1項 | 被告人以外の者の供述録取書 | 供述者の署名・押印があり、死亡・所在不明などで法廷供述が困難な場合など |
| 321条2項 | 公判期日での供述録取書 | 公判での供述が任意であること |
| 321条3項 | 検証調書 | 作成者が証人として尋問され、真正に作成されたと供述すること |
| 322条 | 被告人の供述書 | 自白でなくても不利益な事実の承認がある場合など |
| 323条 | 公務員作成の書面や業務上作成された書面 | 信用性が高く、通常の業務過程で作成されたもの |
| 328条 | 自己矛盾供述 | 供述者が以前と異なる供述をした場合、その信用性を争う目的で使用される |
例外が認められる理由
供述者が死亡・失踪・病気などで出廷できない
供述内容が他の証拠と整合し、信用性が高い
供述が犯罪事実の証明に不可欠
反対尋問が事実上不可能な状況
実務上のポイント
書面の真正性(改ざんされていないか)
供述者の署名・押印の有無
録取時の状況(裁判官・検察官の面前かどうか)
供述内容の信用性と必要性
ICレコーダー録音の証拠能力
録音された内容が「供述」に該当する場合、伝聞証拠となる可能性があります。
ただし、録音は機械的に記録されるため、録取過程に人の関与がない場合は「第二供述過程1」における伝聞性が排除されると考えられています。
つまり、録音された供述が正確に記録されていると認められれば、証拠能力が認められる可能性が高まります。
刑事訴訟法328条との関係
供述の信用性を争うために、矛盾する供述が録音されたICレコーダーの内容を「証拠」として用いることが可能とされています。
この場合、録音内容の真実性ではなく、供述の信用性を減殺する目的で使用されるため、非伝聞として扱われることがあります。
注意点
編集の有無や録音の正確性が争点になることがあります。
裁判所は、録音の信頼性(編集の痕跡、録音者の技術、録音状況など)を総合的に判断して証拠能力を認定します。