第1問
弁論主義の下における証明責任の機能について、証明責任を負わない当事者の立証活動の在り方に関する規律に触れつつ、論ぜよ。

出題趣旨

 本来的に訴訟の最終段階で機能する(客観的)証明責任と訴訟過程に関する原理である弁論主義との関係についての理解を問うことを第一とする問題である。さらに、弁論主義の下で生じるいわゆる主観的証明責任(証拠提出責任)は、論理的には、証明責任を負担しない当事者の行うべき訴訟活動を規律するものではないが、事案の適切な解決のために、どのような制度や理論が存するかという点についても論ずべきである。


第2問
Xは、Yに対し、200万円の貸金債権(甲債権)を有するとして、貸金返還請求訴訟を提起したところ、Yは、Xに対する300万円の売掛金債権(乙債権)を自働債権とする訴訟上の相殺を主張した。
この事例に関する次の1から3までの各場合について、裁判所がどのような判決をすべきかを述べ、その判決が確定したときの既判力について論ぜよ。
1 裁判所は、甲債権及び乙債権のいずれもが存在し、かつ、相殺適状にあることについて心証を得た。
2 Xは「訴え提起前に乙債権を全額弁済した 」と主張した。裁判所は、甲債権が存在すること及び乙債権が存在したがその全額について弁済の事実があったことについて心証を得た。
3 Xは「甲債権とは別に、Yに対し、300万円の立替金償還債権(丙債権)を有しており、訴え提起前にこれを自働債権として乙債権と対当額で相殺した 」と主張した。裁判所は、甲債権が存在すること並びに乙債権及び丙債権のいずれもが存在し、かつ、相殺の意思表示の当時、相殺適状にあったことについて心証を得た。

出題趣旨

 判決及び既判力の意味内容を正しくかつ深く理解しているかを問う問題である まず請求認容判決になるか請求棄却判決になるかとの結論を述べ、その判決主文の判断について生じる既判力の根拠、範囲及び内容を論ずべきである。それを前提として、相殺の主張に関する理由中の判断に認められる既判力について、その制度趣旨と前記既判力に関する基本的理解の両面から、その範囲及び内容を論ずべきである。

答案作成手順

第1 設問1
1 裁判所がすべき判決
(1)甲乙の両債権は金銭債権であり、両方とも相殺適状にあることから、200万の範囲で乙の主張する訴訟上の相殺が認められる。
(2)よって、裁判所は、甲債権が消滅したことを理由に、Xの請求を棄却すべきである。
2 既判力
(1)確定判決の既判力は、判決主文中の判断に限定される(114条1項)のが原則である。よって、Xの請求が棄却されれば、甲債権の不存在に既判力が認められる。甲債権と相殺した乙債権についても相殺額に既判力が及ぶ(114条2項)が、これは判決理由中の判断にも例外的に既判力を認める規定であるため、既判力の及ぶ範囲が問題となる。
(2)114条2項の役割は、相殺された債権での争いの蒸し返しを防ぐことにあるが、その後の訴訟追行自由が必要以上に制限されるおそれもあるため、同項の既判力を相殺額のみに限定して調和を図るべきである。

第2 設問2
1 裁判所がすべき判決
 自働債権が弁済により存在していないことから相殺は認められず、存在している甲債権の返還請求について、裁判所は認容判決をすべきである。
2 既判力
(1)114条1項により、甲債権200万の支払い請求権の存在に既判力が及ぶ。
(2)乙債権300万については、弁済により不存在であると認定しているので、114条2項により乙債権が不存在であることの理由中の判断に既判力が及ぶ。
第3 設問3
1 裁判所がすべき判決
 Yの甲乙債権の相殺主張に対し、Xが乙丙債権の相殺で両債権とも不存在である旨の主張をしている。裁判所は、甲債権が存在すること及び乙丙両債権が訴訟前の相殺で不存在であることの心証を得た。よって、裁判所は請求認容の判決をすべきである。
2 既判力
(1)114条1項により、甲債権による200万の支払請求権の存在に規範力が及ぶ。
(2)訴訟上の相殺となる乙債権300万の不存在については、114条2項に基づき既判力が及ぶ。
(3)訴訟外の相殺となる丙債権についても同項の適用があるか。114条2項が、相殺を主張した債権を使って後訴で不当な蒸し返しを防止することを目的としているので、丙債権の不存在に既判力を与えなくても後訴での蒸し返しは信義則で充分防止できると解する。
以上

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