第1段階:国際裁判管轄(International Jurisdiction)
日本の裁判所がこの事件を審理してよいか?
根拠法: 民事訴訟法3条の2〜3条の12(2012年・2019年改正の内容が中心)
検討事項:
合意管轄(3条の71)
法定管轄: 被告の住所、義務履行地(3条の32)、不法行為地などがあるか。
特段の事情(3条の93): 管轄権があっても、個別の事情で却下すべきか。
第2段階:準拠法の決定(Choice of Law)
どこの国の法律(民法など)を適用して解決するか?
根拠法: 「法の適用に関する通則法」(通則法)。
検討事項:
①性質決定: その問題が「契約」なのか「不法行為」なのか「不当利得」なのかを分類する。
②連結点: 分類に基づき、どこの国の法に結びつけるかを決める(当事者の選択、常居所地、最密接関係地など)。
例:契約なら通則法7条4(当事者の選択)、8条5(最密接関係地)。
第3段階:外国判決の承認・執行(Recognition and Enforcement)
(※主に、外国で出た判決を日本で有効にしたい場合に検討)
根拠法: 民事訴訟法118条6、民事執行法24条7。
答案作成のコツ
1. 「手続」と「実体」を分離する
手続法(管轄や訴訟手続): 常に「法廷地法(裁判が行われている国の法律)」に従います。日本で裁判するなら、日本の民訴法です。
実体法(契約の成否や相殺の可否): 通則法によって選ばれた「準拠法」に従います。
今回の設問1の罠: 「相殺の抗弁を審理できるか」は手続(管轄)の問題なので、日本の民訴法の解釈です。一方で、「実際に相殺が有効か(相殺適状か)」は実体法の問題なので、準拠法(通則法34条8)の問題になります。ここを混ぜないのがコツです。
2. 性質決定を丁寧に行う
「これは何のジャンルの問題か?」を確定させます。
例えば「不法行為」と判断すれば、通則法17条9(結果発生地法)へ飛びます。
「不当利得」なら通則法14条10へ飛びます。 この「どの条文の入り口に立つか」を決める作業が最も重要です。
条文番号を正確に引く: 国際私法は条文の構造がパズルのようになっているため、民訴法3条の〇〇や、通則法〇条を正確に指摘するだけで点数が安定します。
「法廷地法11」という言葉を使う: 日本の裁判所で審理している場合、「法廷地法である日本の民事訴訟法によれば…」と書くと、国際私法の作法を理解していることが伝わります