この規定は、当事者の国籍国(本国)の中で、州や地域によって法律が異なる場合(例えばアメリカやイギリスなど)に、どの地域の法律を適用すべきかを定めるためのルールです。
結論
通則法第38条第3項は、本国法が地域的に不統一な場合、その本国の国内ルール(これを「域際私法」といいます)に従って指定される地域の法律を、日本の裁判所が適用すべき「本国法」とすることを定めています。
つまり、どの地域の法を適用するかを日本が独自に決めるのではなく、その国自身のルールに判断を委ねるという仕組みです。
条文の解説
(本国法)
第三十八条 当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。
2 当事者の本国法によるべき場合において、当事者が国籍を有しないときは、その常居所地法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)及び第三十二条の規定の適用については、この限りでない。
3 当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。
この条文のポイントは「その国の法に従えば」という部分です。これは、その国(例えばアメリカ)の国際私法(抵触法)や、国内の地域間の法律の抵触を解決するためのルール(域際私法)を指します。
多くの国では、人の身分に関する事柄(結婚、親子関係、相続など)の準拠法を、その人のドミサイル(domicile, 法定住所)がある地の法律としています。
具体的な適用プロセス
アメリカ国籍を持つAさんの相続が日本の裁判所で争われるケースを例に、適用プロセスを説明します。
- 準拠法の決定(日本のルール) 日本の通則法第36条により、相続は「被相続人の本国法」によると定められています。したがって、Aさんの本国法であるアメリカ法が準拠法となります。
- 地域不統一法国であることの確認 アメリカは州ごとに相続法が異なる「地域的不統一法国」です。そのため、どの州の法律を適用するかが問題となり、ここで通則法第38条第3項が登場します。
- 本国の域際私法の参照 通則法第38条第3項に基づき、日本の裁判所はアメリカの抵触法(域際私法)を参照します。アメリカの多くの州では、相続の準拠法は「被相続人が死亡時に有していたドミサイル(domicile)地」の法とされています。
- 具体的な地域の法の特定と適用 Aさんが死亡時にカリフォルニア州にドミサイルを有していたと認定された場合、アメリカのルールに従えばカリフォルニア州法が適用されることになります。 その結果、日本の裁判所は、Aさんの「本国法」としてカリフォルニア州の相続法を適用して、相続問題を審理・判断します。
まとめ
このように、通則法第38条第3項は、準拠法の指定をより具体的にするための技術的な規定です。外国の法制度を尊重し、その国が最も当事者と密接な関係があると考える地域の法律を適用することで、国際的に調和のとれた解決を目指すことを目的としています。
| ステップ | 内容 | 適用されるルール |
| 1 | 相続の準拠法は「本国法」とする | 日本の通則法第36条 |
| 2 | 本国がアメリカ(地域不統一国)である | 事実認定 |
| 3 | 本国のルール(域際私法)で適用地域を決める | 日本の通則法第38条第3項 |
| 4 | アメリカのルールでは「ドミサイル地法」 | アメリカの抵触法 |
| 5 | 当事者のドミサイル地がカリフォルニア州だった | 事実認定 |
| 結論 | カリフォルニア州法を「本国法」として適用 |