〔第1問〕(配点:50)
X女とY男の夫婦は日本に居住していた。ところが、その後その離婚が問題となった。以上の事実を基に、以下の設問に答えなさい。
〔設問1〕
XとYは共に甲国人であり、現在もなお、共に日本に常居所を有している。XとYは離婚することに合意した。財産分与についても合意が成立している。甲国には協議離婚制度はなく、裁判離婚主義が採られているので、XとYは、裁判所での手続によらなければならないと考え、また日本で生活しているので日本の裁判所での手続により、その手続の中でも離婚訴訟ではなく調停手続により離婚を成立させることを希望して調停を申し立てた。XとYについて調停離婚を認めることができるかどうか、調停離婚が認められないとした場合には、日本の裁判所においていかなる手続によることができるかについて論じなさい。
なお、甲国民法には、下記のように、当事者間に離婚とその諸効果について合意が成立している場合に、原則的に当事者の合意を尊重する裁判手続がある。
【甲国民法】
① 夫婦は、離婚及びその諸効果について合意した場合には、離婚の諸効果を定める合意書について裁判官の承認を得るべく、共同で離婚を請求することができる。
② 裁判官は、夫婦の合意が真意に基づくものであり、自由になされ、かつ思慮あるものであるとの心証を得た場合には、その合意書を認可し、離婚を言い渡す。
③ 裁判官は、その合意書が子又は夫婦の一方の利益を保持するには不十分であると認定する場合には、認可を拒否し、離婚を言い渡さないことができる。
〔設問2〕
XとYは共に乙国人であり、共に日本に常居所・住所を有していたが、Yは日本で出会った乙国人A女と不貞行為に及び、それがXに知られて、婚姻関係が破綻し、XとYは事実上別居し、YはAと同居するに至った。YとAはその後、共に乙国に帰国してしまい、現在は乙国に住所を有している(Xは乙国内でのYの住所を知っている。)。他方、Xは現在も日本に住所を有している。
Xは、もはやYと離婚するほかないと考え、日本の裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てたが、Yはこれに応じなかった。そこで、Xは日本の裁判所にYを被告として、離婚、財産分与、慰謝料を求めて訴訟を提起した。このうち、財産分与については、夫婦の財産の分配と清算についてのみ請求されている。また、慰謝料については、離婚せざるを得なくなったことについての精神的苦痛とYの不貞行為についての精神的苦痛への賠償の両方を含むものとして請求されている。
〔小問1〕
本件訴訟における上記各請求について、日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかについて論じなさい(調停事件の国際裁判管轄権について論じる必要はない。)。
〔小問2〕
仮に上記各請求について日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるものとした場合、上記各請求について判断するに当たり適用すべき準拠法の決定について論じなさい。
〔第2問〕(配点:50)
Xは、建設資材の原材料などを販売する日本の株式会社であり、日本以外に営業所を有していない。Yは、建設資材Mの製造・販売を目的とする甲国法人の会社であり、甲国以外に営業所を有していない。
商品Gは、通常、建設資材Mを製造するための原材料として使用されるものであり、多数の企業が商品Gを販売している。各企業が販売している商品Gの強度には若干の相違があるが、いずれの商品Gであっても、建設資材Mの製造を行うことができる。ただし、ごく一部の先端的な設備を有
する工場(Yの工場を含む。)では、品質の高い建設資材Mを製造しているため、一定以上の強度を有する商品Gを使用しなければ建設資材Mの製造を行うことができない。
Yは、Xが販売する商品Gの価格が比較的低額であったことから、Xに対して商品Gのサンプル(=見本)を送付するよう求めた。Yの求めに応じて、Xは、Yに対して、商品Gのサンプルを送付した。Yがサンプルを使用してYの工場で建設資材Mの試験製造を行ったところ、建設資材Mの
製造を行うことができた。そこで、Yは、Xとの間で、次のような内容の売買契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
⑴ Xは、Yに対して、200トンの商品Gを引き渡すものとする。
⑵ 商品Gの引渡地は、甲国のK港とする。
⑶ Yは、Yが商品Gを甲国のK港で受領した日から7営業日以内に、Xが甲国に開設したX名義の銀行口座に振り込む方法で、代金を支払う。
⑷ 代金は、1億円(1トン当たり50万円)とする。
本件契約には国際裁判管轄権に関する条項や仲裁条項はなかった。
その後、Yは、甲国のK港で商品Gを受領した。Yが直ちに商品Gを検査したところ、その商品Gは、サンプルと比べて強度が不足しており、Yの工場では建設資材Mの製造のための原材料として使用できないことが判明した。そこで、Yは、Xに対して、検査結果を示すとともに受領した商
品Gがサンプルと同等品質のものではなかった旨を通知し、他社から、サンプルと同じ強度の商品Gを200トン、代金1億6000万円で購入した。Yは、この購入代金と本件契約代金との差額である6000万円の損害を被ったとして、Xがその損害の賠償を行うべきであると主張し、本件
契約代金全額の支払を拒んでいる。
なお、甲国は、「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(以下「ウィーン売買条約」という。)の締約国ではない。
以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各問は独立した問いである。
〔設問1〕
Xは、Yを被告として、未払代金1億円の支払を求める訴えを日本の裁判所に提起した。この訴えについて、日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかについて論じなさい。
なお、Yは、建設資材Mの製造方法に関連した発明について、甲国のほか日本でも特許権を有している(そのうち日本で登録されたYの特許権の評価額は、5000万円である。)。
〔設問2〕
Yは、Xを被告として、Xの契約違反によって被った損害の賠償を求める訴えを日本の裁判所に提起した。本件契約には、「⑸ 甲国法を準拠法とする。」との条項があったとする。
この訴訟において、X及びYのいずれも、Yによる損害賠償請求について、日本の民法の適用があることを前提にそれぞれの主張を行った。裁判所は、この請求について、日本の民法を適用して判断することができるかについて論じなさい(ウィーン売買条約の適用について論じる必要はない。)。
〔設問3〕
Yは、Xを被告として、Xの契約違反によって被った損害の賠償を求める訴えを日本の裁判所に提起した。本件契約には、準拠法が明示的にも黙示的にも定められていなかったとする。
〔小問1〕
この訴訟において、裁判所は、Yによる損害賠償請求について、ウィーン売買条約第1条の規定に基づき、ウィーン売買条約を適用することとした。裁判所の判断の過程を説明しなさい
(ウィーン売買条約第2条から第6条までの規定について論じる必要はない。)。
〔小問2〕
この訴訟において、裁判所は、Yによる損害賠償請求について、ウィーン売買条約を適用した上で、Xが引き渡した商品Gが契約に適合しておらず、Xに契約上の義務の不履行があったことを理由として、Yの上記請求を認めた。裁判所の判断の過程を説明しなさい(ウィーン売買条約第38条から第40条までの規定及び第74条から第77条までの規定について論じる必要はない。)。
なお、Yは、Xに対して、商品Gを先端的な設備を有するYの工場で使用することなどの特定の目的を一切伝えていなかった。