〔第1問〕
(配点:50)
甲国人男Aは、地震の研究のために日本の大学に勤務していたが、その間に日本人女Xと知り合い、甲国において婚姻した。婚姻後5年を経過した時点で甲国に地震が発生し、当時、甲国の震源地近くで調査を行っていたAが行方不明となった。地震発生後7年が経過したが、Aの生死は依然不明の状態にある。AとXの婚姻が有効に成立していることを前提として、以下の設問に答えよ。
なお 甲国の国際私法には次の規定があること また 本件事案には法の適用に関する通則法 平成18年法律第78号)が適用されることを前提とする。
【甲国国際私法】
第P条 裁判所は、甲国国際私法の規定によって指定された国の実質法のみを適用する。
第Q条 相続は、相続財産の所在地にかかわらず、被相続人の最後の住所地の法による。
〔設 問〕
1. AとXは、婚姻後、甲国において婚姻生活を送っていたとする。Aが行方不明となって間もなくXは日本に帰国して生活していたが、日本人男Bと知り合い、現在ではBとの婚姻を望んでいる。
(1) Xが日本の裁判所にAの失踪の宣告を申し立てた場合に、日本の裁判所はこの申立てについて国際裁判管轄権を有するか。
(2) 日本の裁判所が失踪の宣告をした場合に、日本の裁判所はAとXの婚姻の解消についていかなる国の法によって判断するか。
2. AとXは、婚姻後、日本において婚姻生活を送っていたとする。Aは日本の銀行に預金債権を有しており、Xはこれを相続するために、Aの失踪の宣告を日本の裁判所に申し立て、日本の裁判所はAの失踪の宣告をした。
なお、甲国国際私法第Q条の意味におけるAの最後の住所地は日本にあるものとする。
(1) 法の適用に関する通則法第41条の適用上、甲国国際私法第P条のような規定は一般的にいかなる意味を持つか。
(2) 本件相続に適用される法はいかなる国の法か。
(配点:50)
〔第2問〕
Yは甲国に主たる事業所を有する世界有数の医薬品製造販売業者である。Yはその製造する医薬品Aを甲国だけでなく、乙国等多くの国においてもそれらの国に所在する事業所を通じて販売している。医薬品Aは日本の薬事法上の承認を受けておらず、Yは、日本に事業所も担当者も置いていない。Xは日本に常居所を有する日本人である。以上の事実を前提として以下の設問に答えよ。
なお、各設問はいずれも独立した問いであり、本件には、法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)が適用されることを前提とする。
〔設 問〕
1. Xは、乙国に赴いた際に、日本では購入できない医薬品Aが売られていたので、乙国でこれを購入した。Xは、日本に帰国後、医薬品Aをしばらく服用していたが、体調が悪くなったため、病院で精密検査を受けたところ、医薬品Aの副作用の結果であることが判明し、日本の病院で入通院を余儀なくされた。
(1) XはYに対し 入通院に要した費用等の損害賠償を求める訴えを日本の裁判所に提起した日本の裁判所はこの訴えについて国際裁判管轄権を有するか。
(2) XのYに対する損害賠償請求に適用される法はいかなる国の法か。
2. 乙国に常居所を有するZは、医薬品Aを大量に購入し、それが医薬品として承認されていない国々の居住者に対しても販売している。Xは、インターネットを利用してZから医薬品Aを購入し、郵送によって受領した。Xが医薬品Aをしばらく服用したところ、その副作用のため健康を害し、日本において入通院を余儀なくされた。XのYに対する入通院に要した費用等の損害賠償請求に適用される法はいかなる国の法か。

出題趣旨

〔第1問〕
本問は、法の適用に関する通則法第6条の失踪宣告の国際裁判管轄、準拠法及び失踪宣告の効果についての理解を問うことを中心として、死亡による婚姻解消及び相続の準拠法並びに反致についても基本的な理解を問うものである。
設問1(1)では、失踪宣告について日本の裁判所が通則法第6条第2項の例外的国際裁判管轄を有するか否かが問われている。まず前提として同条第1項の原則的国際裁判管轄の有無を検討し、それがないときは、Xが解消を望むAとの婚姻関係が 「日本法によるべきときその他法律関係の性質、当事者の住所又は国籍その他の事情に照らして日本に関係がある」法律関係と言えるか否かが検討されなければならない 法例第6条によれば 本件のような事案 婚姻の効力の準拠法が日本法とならない事案)については国際裁判管轄が認められず、そのような不都合の是正が通則法第6条の改正趣旨であることを踏まえた上、本件の婚姻関係が日本に関係がある法律関係であるか否かを検討することになる。
設問1(2)は、当事者の死亡による婚姻解消の準拠法について問うものである。法例第6条の解釈と異なり、通則法第6条においては、例外的管轄に基く場合も失踪宣告の効力は死亡の擬制という直接的効果にとどまるものと整理されている。まずこの点を踏まえた上で、婚姻の解消を婚姻の効力(第25条)又は離婚(第27条)のいずれかの問題と性質決定し、準拠法を導く論述が求められる。
設問2(1)は、反致についての基本的な考え方を問うものである。反致を否定する甲国国
際私法第P条のような規定の有無は、反致の成否に影響しないという意味において、通則法第
41条の適用には直接の関係はない。他方で、P条の規定の存在は、本件について、日本にお
いても甲国においても同一の準拠法(日本法)が適用される結果を導くから、判決の国際的調
和という要請を満足させる。従来からの反致制度を維持した通則法第41条の基本的な理解を
示すことが求められる。
設問2(2)は、相続の準拠法を問うものである。失踪宣告の効力の直接的効果を踏まえた
上で、通則法第36条及び第41条を適用して、準拠法を決定することとなる。
〔第2問〕
本問は、生産物責任訴訟の国際裁判管轄及び準拠法の理解を問うものである。
設問1は、日本に常居所を有する個人であるXが、外国で医薬品を購入して日本で副作用が発現した場合の事例である。小問(1)は、日本の裁判所が生産物責任訴訟の国際裁判管轄を有するか否かを問うており、財産関係事件に関する国際裁判管轄についての最高裁判例を踏まえて、国際裁判管轄を決する一般的な基準(条理及びその内容)を論じた上で、本件事例への当てはめを行うことが必要になる。具体的には、民事訴訟法第5条第9号の「不法行為があった地」の概念を明らかにして本事案にあてはめた上、結果発生地である日本に管轄を認めることが当事者間の公平、適正迅速な裁判の実現という理念に反することとなる特段の事情があるかどうかをXとYの利益状況に照らして具体的に論ずる必要がある。
小問(2)は、生産物責任の準拠法を問うものである。法の適用に関する通則法第18条の要件の当てはめを丁寧に行い、Yに対する損害賠償請求の準拠法を導き出すことになる。
設問2は、Xがインターネットを通じて医薬品を購入した事例についての生産物責任の準拠法を問うものである。まず、本事例のような生産物の送付地と受領地が異なる場合の生産物の引渡地がどこになるのかを通則法第18条の趣旨から論じた上で、同条ただし書の「その地における生産物の引渡しが通常予見できない」との意義について説明し、示された事実関係からどのように判断するかを述べることが求められている。

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