民事訴訟における「準備書面」は、口頭弁論に先立って、自らの主張や相手方の主張に対する反論を裁判所に提出する書面です。裁判官が事件の争点を正確に把握し、審理を円滑に進めるための非常に重要な役割を担います。準備書面に記載すべき事項は、形式的な事項と実質的な事項に大別されます。

1. 形式的記載事項

まず、すべての準備書面に共通して記載すべき形式的な事項は以下の通りです。これらは、民事訴訟規則第2条第1項にも定められています。

  • 事件の表示:
    • 事件番号: 訴訟が提起された際に裁判所から付与される番号(例:「令和〇年(ワ)第〇〇〇号」)を正確に記載します。
    • 事件名: 訴状に記載されている事件名(例:「貸金返還請求事件」)を記載します。
  • 当事者の表示:
    • 原告・被告の氏名(または名称): 訴状に記載されている通りに正確に記載します。
    • 代理人がいる場合: 代理人弁護士の氏名、事務所の名称・所在地・電話番号・FAX番号も記載します。
  • 書面の名称:
    • 「準備書面」と記載します。何回目か分かるように、「準備書面(1)」「準備書面(2)」のように一連の番号を付すのが一般的です。原告が提出する場合は「原告準備書面」、被告が提出する場合は「被告準備書面」とすることもあります。
  • 提出年月日: 準備書面を裁判所に提出する日付を記載します。
  • 作成者の氏名と押印: 準備書面を作成した当事者本人または代理人弁護士が記名押印します。
  • 宛名:
    • 事件が係属している裁判所名(例:「〇〇地方裁判所 民事第〇部 御中」)を記載します。

2. 実質的記載事項

準備書面の核心となるのが、以下の実質的な内容です。

(1) 相手方の主張に対する認否・反論

相手方が前の準備書面や訴状で主張した事実一つひとつに対して、自らの立場を明確にする必要があります。これを「認否」といい、以下のいずれかの態度を明らかにします。

  • 認める(自白): 相手方の主張する事実を認める場合です。認めた事実は、当事者間に争いのない事実となり、その後の証明は不要となります。
  • 否認する: 相手方の主張する事実を明確に争う場合です。「〇〇という事実は否認する。」と記載します。否認した事実は、相手方当事者が証拠によって証明する必要がある争点となります。
  • 知らない(不知): 相手方の主張する事実について、自分には関わりがなく、真偽が分からない場合です。法律上は、否認したものと推定されます。

認否に加えて、なぜその事実を否認するのか、自らが認識している事実はどうなのか、といった反論を具体的に記載します。

【記載例】 「被告準備書面(1)第2項記載の事実のうち、原告が令和〇年〇月〇日に被告に対し本件金銭を交付した事実は認める。しかし、その余の事実(同金銭が貸金であったとの事実)は否認する。同金銭は、原告から被告に対し贈与されたものである。」

(2) 自らの主張(新たな事実の主張)

認否・反論に続き、またはそれとは別に、自らの請求や主張を基礎づける新たな事実を具体的に記載します。主張は、単に「こう思う」といった感想ではなく、**「いつ、どこで、誰が、誰に対し、何をしたか」**といった要領で、具体的な事実を時系列に沿って分かりやすく記載することが重要です。

(3) 主張を裏付ける証拠の引用

自らが主張する事実が真実であることを裁判官に納得させるためには、その事実を裏付ける証拠を示すことが不可欠です。主張する事実ごとに、関連する証拠(契約書、領収書、写真、陳述書など)を引用し、その証拠から何が分かるのかを説明します。

  • 書証(文書): 証拠として提出する文書には、「甲第〇号証」「乙第〇号証」のように番号を付け、本文中で「(甲第1号証)」のように引用します。
  • 人証(証人尋問): 証人尋問を申請する場合には、その証人がどのような事実について証言できるのかを具体的に記載します。

【記載例】 「原告は、被告に対し、令和〇年〇月〇日付金銭消費貸借契約書(甲第1号証)に基づき、金100万円を貸し渡した。」

準備書面作成にあたっての注意点

  • 分かりやすさ: 裁判官が事件内容を正確に理解できるよう、専門用語を避け、簡潔で論理的な文章を心がけます。
  • 主張の一貫性: 訴状や以前の準備書面での主張と矛盾がないように注意が必要です。
  • 提出期限の遵守: 裁判所から指定された提出期限は厳守しなければなりません。

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