行政庁の行う「行政処分」は、国民の権利義務に直接影響を及ぼす重要な行為です。しかし、その内容や手続きに問題がある場合、その処分は「違法」と判断される可能性があります。行政処分の違法性は、その瑕疵(かし)、すなわち欠陥の性質によって大きく分類され、その後の法的な扱いに重大な違いをもたらします。
違法事由の四大分類
行政処分の違法事由は、一般的に以下の4つの観点から分類されます。
| 違法事由の種類 | 概要 | 具体例 |
| 主体の瑕疵 | 処分を行う権限のない者が行った場合。 | ・税務署長ではない、権限のない職員が行った課税処分 ・法律で定められた審議会の議を経ていない処分 |
| 手続の瑕疵 | 法律で定められた手続きを欠いて行われた場合。 | ・行政手続法で義務付けられている聴聞の手続きを経ずに行われた営業許可の取消処分 ・不利益処分の際に理由が示されていない場合(理由付記の不備) |
| 形式の瑕疵 | 法律で定められた形式(書面の交付など)を守らずに行われた場合。 | ・書面での交付が義務付けられているにもかかわらず、口頭でなされた免職処分 |
| 内容の瑕疵 | 処分の内容が法律の規定に違反する場合。 | ・法律の要件を満たしていない者に対する許可処分 ・事実誤認に基づく課税処分 ・裁量権の範囲を逸脱または濫用した処分(社会通念上著しく妥当性を欠く処分) |
「取消」と「無効」:瑕疵の程度の違いが運命を分ける
行政処分に違法事由がある場合、その効力は「取消うべきもの」と「無効」の二つに大別されます。この違いは、瑕疵の程度によって決まり、法的な救済を求める上で極めて重要です。
取消すことができる行政処分
瑕疵が比較的軽微な場合、その行政処分は「取消すことができる」ものとされます。これは、権限のある行政庁や裁判所によって取り消されるまでは、一応有効なものとして扱われることを意味します(これを公定力といいます)。
不服のある者は、定められた期間内(処分があったことを知った日の翌日から原則として3ヶ月以内)に行政不服審査法に基づく審査請求や、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟を提起して、その効力を争う必要があります。この期間を過ぎると、たとえ違法な処分であってもその効力は確定し、争うことができなくなります(不可争力)。
無効な行政処分
一方、瑕疵が重大かつ明白である場合、その行政処分は「無効」と判断されます。無効な行政処分は、初めから何らの法的効力も有しません。
- 重大性: 瑕疵が、行政処分の目的や法秩序の根幹に関わるほど、著しく大きいことを指します。
- 明白性: 処分の外形からみて、瑕疵の存在が誰の目にも明らかであることを指します。
無効な処分については、取消訴訟のような出訴期間の制限はなく、いつでもその無効を主張することができます。また、公定力も働かないため、誰もがその効力を否定できます。例えば、全く権限のない機関が行った処分や、既に死亡している人物に対してなされた処分などがこれに該当します。
ただし、実務上、瑕疵が「重大かつ明白」であると認められるハードルは非常に高く、ほとんどの違法な処分は「取消すことができる」にとどまるのが実情です。
行政処分に疑問を感じた場合には、その違法事由がどの種類に該当し、それが「取消」の対象なのか、それとも「無効」を主張できるのかを正確に把握することが、適切な権利救済への第一歩となります。