合併無効の訴えとは、法的に効力が発生した後の合併について、その手続きに重大な法的不備(瑕疵)があることを理由に、その効力を初めから無かったことにする(無効にする)よう裁判所に求める法的な手続きです。
会社法第828条に定められており、会社の組織再編における最終的な法的救済手段の一つです。
どんな時に訴えを起こせるか? (無効事由)
「株主総会決議取消の訴え」が手続き上の比較的軽微なミスを対象とするのに対し、合併無効の訴えが認められるのは、合併の効力を覆すほどの重大な不備がある場合に限られます。
主な無効事由には、以下のようなものがあります。
承認決議の不存在・無効:
合併を承認するための株主総会がそもそも開かれていなかった。
承認決議そのものが無効である場合(例:定足数を満たしていないなど)。
債権者保護手続きの重大な違反:
法律で定められた債権者への公告や催告を全く行わなかった、またはその内容に重大な誤りがあった。
合併契約自体の無効:
合併契約が公序良俗に反するなど、契約として無効である場合。
法律が定める手続きの根本的な欠落:
その他、合併の効力を左右するような法律上の手続きを全く踏んでいなかった場合。
誰が、いつまでに訴えを起こせるか?
この訴えにも厳格なルールがあります。
誰が? (提訴権者):
各当事会社の株主、取締役、監査役、清算人など
合併を承認しなかった債権者
破産管財人
いつまでに? (提訴期間):
合併の効力が発生した日から6か月以内この期間を過ぎると、たとえ重大な不備があったとしても、原則として無効を主張できなくなります。これは、取引の安全性を保護するためです。
裁判で合併が無効になるとどうなるか?
裁判所が訴えを認める判決を下し、その判決が確定すると、合併は初めから無かったことになります。
効力: この判決も対世効(たいせいこう)を持ち、訴訟の当事者だけでなく、すべての第三者に対して効力が及びます。
結果: 消滅した会社は復活し、存続会社(または新設会社)から資産や権利義務が戻されます(権利義務の復旧)。ただし、実際には多くの取引関係者が関わっているため、その清算手続きは非常に複雑になります。
決議取消の訴えとの比較
| 項目 | 合併無効の訴え | 株主総会決議取消の訴え |
| 対象 | 合併そのもの | 株主総会の決議 |
| 不備のレベル | 重大(決議不存在、手続きの欠落など) | 比較的軽微(招集通知漏れなど) |
| 提訴期間 | 合併の効力発生日から6か月以内 | 決議の日から3か月以内 |
| 主な提訴権者 | 株主、取締役、債権者など | 株主、取締役など |