会計帳簿等の閲覧請求は、会社の経営の透明性を確保し、株主や社員などの利害関係者がその権利を適切に行使するために認められた重要な権利です。しかし、この権利は無制限に認められるわけではなく、請求が認められるか否かは、請求者の立場や請求理由、会社の状況などによって判断されます。
請求が認められる主なケース
会計帳簿の閲覧請求権は、主に会社法において、会社の種別ごとに以下のように定められています。
株式会社の株主による請求 (会社法433条)
株式会社の株主が会計帳簿の閲覧を請求する場合、以下の要件を満たす必要があります。
株主の資格要件:
総株主の議決権の100分の3以上の議決権を持つ株主
または、発行済株式の100分の3以上の数の株式を持つ株主
請求理由の明示:
請求する理由を具体的に明らかにする必要があります。過去の判例では、役員の不正行為や法令・定款違反の疑い、会社の財産状況を把握するためなど、株主としての権利を確保・行使するために必要不可欠な場合といった、正当な理由が求められます。単なる興味本位や抽象的な不安だけでは、理由として不十分とされる可能性があります。
請求手続き:
まずは、理由を明らかにして会社に直接請求します。
会社がこれを拒否した場合は、株主は裁判所に対して会計帳簿の閲覧許可を求める訴えを提起することができます。
持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)の社員による請求
持分会社の社員は、その業務および財産の状況を調査する権利の一環として、会計帳簿の閲覧を請求できます(会社法582条2項、615条など)。株式会社の株主のような保有割合の要件はなく、各社員が単独で請求権を持つのが原則です。
その他の法人
一般社団法人やNPO法人など、会社以外の法人においても、それぞれの根拠法や定款の定めに基づき、社員や会員による会計帳簿の閲覧請求権が認められている場合があります。
会社が閲覧を拒否できるケース
会社は、以下のような正当な理由がある場合、閲覧請求を拒否することができます(会社法433条2項)。株主の権利確保・行使以外の不当な目的:
会社の業務遂行を妨害するため。
会社の経営陣を困惑させ、株主個人の利益を図るため(いわゆる総会屋的行動など)。
単なる嫌がらせ目的。
会社の競争上の利益を害する場合:
請求者が会社の事業と実質的に競争関係にある事業を営んでいる、または従事している場合。帳簿の閲覧によって得た情報が競争事業に利用される恐れがあるためです。
株主以外の第三者の利益を図る目的:
閲覧によって知り得た情報を、第三者に有償・無償を問わず提供し、利益を得る目的がある場合(インサイダー取引の恐れなど)。
過去の不正使用:
請求者が過去2年以内に、閲覧によって知り得た情報を上記のような不当な目的で使用したことがある場合。
まとめ
会計帳簿の閲覧請求が認められるか否かは、「誰が」「どのような目的で」請求するのかが最も重要な判断基準となります。
可(認められる可能性が高い): 正当な株主や社員が、役員の不正行為の調査や自らの権利を守るためなど、具体的かつ正当な理由に基づいて請求する場合。
否(拒否される可能性が高い): 請求の目的が不当であったり、会社の営業秘密や株主共同の利益を害する恐れがあったりする場合。
最終的に閲覧の可否について争いがある場合は、裁判所の判断に委ねられることになります。