第1問
 Ⅹは、自転車に乗って道路を横断中、Yが運転する乗用車と接触して転倒し負傷したために、3000万円の損害を被ったと主張して、Yに対し、3000万円のうちの2000万円の損害賠償を求める訴えを提起した。この訴訟において、Yは、請求棄却を求め、事故の原因は急いでいたために赤信号を無視したⅩにあると主張した。裁判所は、事故はYの過失によって発生したも のであり、Ⅹの被った全損害の損害額は2500万円であるが、整備不良のためにブレーキがきかないまま自転車を運転し赤信号の道路に飛び出したⅩにも5割の過失があると認めた。
 裁判所は、どのような判決をすべきか。

出題趣旨

 過失相殺の訴訟上の取扱いを問う問題である。弁論主義の意義・機能及び弁論主義が適用される事実を明らかにした上で、裁判所が判決において過失相殺をするためには当事者がどのような主張をすることが必要かを論ずべきである。また、一部請求の訴訟物が何かを踏まえつつ、見解の対立をも踏まえて一部請求における過失相殺の方法を論ずべきである。

答案作成手順

1 裁判所は、Xの過失を認め、過失相殺によりYに1000万の損害賠償を命ずることができるか。
2 過失相殺の可否
(1)Yは過失相殺の主張をしていないので、裁判所が過失相殺を認定することが弁論主義(第1テーゼ)に反しないかが問題となる。
(2)過失相殺は、損害の公平な分担という公益に基づき認定されるものであることから、Yが過失相殺の主張を待たずに職権で行なえるものと解する。
(3)職権で過失相殺を行えるとしても、Yが過失相殺に使われる事実を主要事実として主張している必要があるのではないか。
(4)まず、主要事実とは判決の根拠となり、弁論主義の適用される事実をいう。過失相殺が適用される主要事実は、過失を認定できる事実をいう。
 Yは、「赤信号を無視したXにある」と主張しており、過失相殺に使われた事実も「自転車を運転し赤信号の道路に飛び出したX」と認定しているので、Yも裁判所も第1テーゼに抵触しないと認められる。(5)以上により、裁判所は第1テーゼに抵触することなく過失相殺の判決ができる。
2 一部認容判決の可否
(1)Xは2000万の損害賠償を求めているが、裁判所が1000万の損害しか認めないことは処分権主義(246条)に反しないか。
(2)処分権主義とは、裁判所が審理する範囲を当事者が決定できることであり(私的自治)、予見可能性のある判決を当事者に保障するためのものである(不意打ちの防止)。よって、損害賠償の金額が0から2000万の範囲であれば処分権主義に反するとはいえない。

(3)以上により、裁判所は1000万の一部任用判決を下すべきである。
                                                     以上



第2問
 Ⅹは、Yとの間で動産の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結したとして、Yに対し債務の履行を求めたが、Yは、本件売買契約はYの代理人と称するZがYに無断で締結したものだと主張し、Ⅹの請求に応じようとしない。そこで、Ⅹは、YとZを共同被告とする訴えを提起し、Yに対しては本件売買契約の当事者としての債務の履行を求め、Zに対しては無権代理人とし ての債務の履行を求めた。
 第1回口頭弁論期日において、Ⅹは、同時審判の申出をし、Yに対しては本件売買契約当時のZの代理権の存在を主張し、Zに対してはZの代理権の不存在を主張した。Yは、Zの代理権の存在を争う旨の主張をし、証拠の申出をしたが、Zは、答弁書を提出しないまま第1回口頭弁論期日に欠席した。
1 裁判所は、第1回口頭弁論期日においてZについて弁論を分離してX勝訴の判決をすることができるか。
2裁判所は弁論を分離しなかったが、Zはその後の期日もすべて欠席した。証拠調べの結果、裁判所は、本件売買契約当時、Zは代理権を有していたとの心証を得た。この場合、裁判所はどのような判
決をすべきか。
3 2とは逆に、裁判所は、本件売買契約当時、Zは代理権を有していなかったとの心証を得たため、ⅩのYに対する請求を棄却し、Zに対する請求を認容する判決をした。この第1審判決に対してXが
Yを被控訴人として控訴した場合、控訴裁判所は、YとZを共同被控訴人として判決をすることができるか。

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