最高裁昭和62年6月5日の判決は、賃借権の時効取得に関する重要な判例の一つです。この判例を基にした事例問題では、土地の所有者X、占有者である甲、乙、Yが登場し、YがXの土地明渡請求を拒むことができるかが争点となります。Yが賃借権の時効取得を主張するためには、下記の要件を満たす必要があります。
賃借権の時効取得とは
賃借権の時効取得とは、民法163条1基づき、一定の要件を満たす場合に、他人の土地を継続して使用することで賃借権を取得できる制度。判例では、不動産賃借権は不動産を占有する権利であるため、取得時効が成立するものとしています。
賃借権の時効取得の要件
- 自己のためにする意思:賃借の意思をもって不動産を使用収益する意思。
- 権利の行使:賃借の意思に基づいて不動産を使用収益していることが客観的に表現されていること。賃料の支払いまたは供託が、権利行使の客観的表現として重要視されます。
- 平穏かつ公然の占有:占有が平穏かつ公然に行われていること。
- 占有の継続:10年(善意無過失の場合)または20年(悪意または有過失の場合)の占有継続が必要。
賃借権の時効取得が認められるケースの例
- 所有権や賃貸権限を有すると称する者から土地を借り、賃料を支払っていた場合。
- 賃貸借契約に何らかの欠陥があるものの、土地の利用が継続されていた場合。
- 賃借権の設定範囲外の隣地についても、継続的な用益が存在し、賃借の意思に基づいている場合。
- 無権限者から賃借権の設定を受けた場合でも、建物を建築し長年賃料を支払っていた場合。
- 賃貸人の承諾なく転貸が行われた場合でも、転借人が一定の要件2を満たせば転借権の時効取得が可能です。
賃借権の時効取得の効果
賃借権を時効取得した場合、借地人は真の所有者に対しても賃借権を主張でき、土地の使用を継続できます。
注意点
- 賃借権の時効取得は、抵当権設定登記後でも可能ですが、抵当権設定登記以前に対抗要件3を備えていない場合、競売による買受人に対抗できないことがあります。
- 賃貸借契約に基づき住み続けた場合、20年住んでも新たに居住権を取得することや持ち家になることはありません。
- 賃借権の時効取得は、一般的に原始取得と考えられています。これは、時効によって新たに権利が発生すると解釈されるためです。