譲渡人である取締役に対する招集通知を欠いて行われた、株式の譲渡承認に関する取締役会決議の効力は、原則として有効です。(平成23年予備試験)

1. 原則:招集通知を欠く決議は「無効」

まず大原則として、取締役会の招集通知は、すべての取締役に対して行わなければなりません(会社法第368条1項)。一部の取締役に対してこの招集通知を欠いて行われた取締役会決議は、決議の方法に法律違反の瑕疵(かし)があるものとして、原則として無効となります。

2. 論点:「譲渡人である取締役」の立場

次に、「譲渡人である取締役」が、法律上どのような立場になるかを確認します。株式の譲渡承認に関する取締役会決議において、その株式の譲渡人または譲受人である取締役は、決議の結果に個人的な利害関係を有するため、「特別利害関係取締役」に該当します(会社法第369条2項)。
特別利害関係取締役は、その決議において議決権を行使することができません

3. 結論:【例外】特別利害関係取締役への招集通知を欠く決議は「有効」

原則に従えば、たとえ譲渡人たる取締役であっても、招集通知を欠けば決議は無効となりそうです。
しかし、この点について最高裁判所は、以下のように判断しています(最高裁判所 平成17年7月15日判決)。

【判旨の要旨】

取締役会の決議につき特別の利害関係を有する取締役(特別利害関係取締役)は、定足数の算定の基礎には加えられるが、議決権を行使することはできない。 そのため、その者(特別利害関係取締役)が取締役会に出席して議決権を行使したとしても、決議の結果に影響を及ぼすことはない。 したがって、特別利害関係取締役に対して招集通知がされなかったとしても、そのことを理由に取締役会決議の効力を無効とすることはできない

なぜ有効なのか?(判例のロジック)

決議への影響がない: 招集通知の最も重要な目的は、取締役に対して取締役会に出席し、議決権を行使する機会を保障することにあります。しかし、特別利害関係取締役はそもそも議決権を持っていません。そのため、その取締役が欠席しても、決議の結果(賛成・反対の票数)に何ら影響がないのです。
手続きの瑕疵の程度が低い: 決議の結果を左右しない人物への通知を忘れたという瑕疵は、決議そのものの効力を覆すほど重大なものではない、と裁判所は考えています。

まとめ

対象となる取締役招集通知の要否招集通知を欠いた場合の決議の効力根拠
通常の取締役<br>(議決権あり)必要原則として無効会社法第368条1項の原則
特別利害関係取締役(譲渡人・譲受人など、議決権なし)不要(欠いてもよい)原則として有効最高裁 H17.7.15判決

したがって、「譲渡人である取締役に対する招集通知を欠いてされた譲渡等承認請求に係る取締役会の決議」は、最高裁判例に基づき、有効と判断されます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA