客体:何をだまし取るのか?
詐欺罪の対象(客体)は、「財物」と「財産上の利益」の2つです。
- 財物(1項詐欺): 現金、宝石、不動産など、経済的価値のあるモノ全般を指します。
- 財産上の利益(2項詐欺): 借金の返済を免除させたり、タダでサービスを受けたり(無銭飲食など)、モノ以外の財産的メリットを得ることを指します。
実行行為:どのように騙すのか?
詐欺罪の実行行為は、以下の①〜④が一連の流れとして繋がっている必要があります。
- ① 欺罔(ぎもう)行為
- 相手を騙す行為です。ウソをついて重要な事実を誤認させます。
- 例:「必ず儲かる」とウソの投資話を持ちかける。
- ② 相手方の錯誤
- ①のウソによって、相手が勘違いすることです。
- ③ 錯誤に基づく交付行為
- 勘違いした相手が、自らの意思でお金や財産を渡してしまうことです。脅し取られるのではなく、騙されて渡す点がポイントです。
- ④ 財産・利益の移転
- 相手の交付行為によって、財産が犯人や第三者の手に渡ることです。
これら①〜④がすべて因果関係で結ばれていることが必要です。
既遂時期:いつ犯罪が完成するのか?
詐欺罪が完成する既遂(きすい)時期は、財産(財物または財産上の利益)の移転が完了した時点です。
- 現金などの財物であれば、犯人がそれを受け取り、自分の支配下に置いた瞬間に既遂となります。
- 財産上の利益であれば、その利益が確定的に得られた時点で既遂です。
財産が犯人に渡る前にウソがバレた場合などは、詐欺未遂罪となります。
共謀共同正犯の成立要件
オレオレ詐欺のように、複数人が役割分担して行われる犯罪では、共謀共同正犯(きょうぼうきょうどうせいはん)という考え方が重要になります。これは、犯罪の実行行為を直接担当していない者でも、計画段階から関わっていれば「正犯」として扱われるという理論です。
共謀共同正犯が成立するには、主に以下の3つの要件が必要です。
1. 共謀の存在
- 特定の犯罪を実行しようという、複数人での意思の連絡(合意)があったことが必要です。
- 全員が一同に会して話し合う必要はなく、電話やSNSなどを通じた「黙示の意思連絡」でも成立します。計画の細部まで合意している必要はありません。
2. 共謀に基づく実行行為
- 共謀した計画に基づいて、仲間の中の誰かが実際に犯罪の実行行為を行うことです。
- 計画を立てただけで誰も実行に移さなければ、犯罪は成立しません(予備罪が適用される場合を除く)。
3. 正犯性(重要な役割)
- 計画全体において、その人が重要な役割を果たしていることが必要です。
- 自らが犯罪の主役の一人であるという「正犯意思」を持って計画に加わっていることが求められます。単なる手伝い(幇助犯)とは区別されます。
- 例: 特殊詐欺グループ内で、主導的な立場で計画を立てた者や、資金管理役、受け子の統括役などは、たとえ被害者と直接話していなくても、重要な役割を果たしたとして共謀共同正犯が成立する可能性が高いです。