Aを欺罔してその農地を買い受けたBが、農地法五条の許可を条件とする所有権移転仮登記を得たうえ、右売買契約上の権利を善意のCに譲渡して右仮登記移転の附記登記をした場合には、Cは民法九六条三項にいう第三者にあたる。

具体的な流れ

  1. **Aさん(被詐欺者)**が、**B(詐欺者)**に騙されて土地を売却し、登記もBに移転した。
  2. Bがその土地を、詐欺の事実を知らない**Cさん(善意無過失の第三者)**に売却し、登記もCに移転した。
  3. その後、Aさんが詐欺に気づき、Bとの売買契約を取り消した

対抗関係の発生

  • Aさんは、契約を取り消したことによって、所有権が自分に復帰したと主張します。
  • 一方、Cさんは、Aさんが取り消す前にBから有効に所有権を取得したと主張します。

この結果、AさんとCさんは、あたかも一つの不動産をめぐる二重譲渡(ダブルセール)に似た関係に立つことになります。AさんもCさんも、それぞれ正当な理由に基づいて所有権を主張しているわけです。

民法177条の適用

このような不動産の物権変動に関する優劣は、民法177条によって決せられます。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件) 第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、(中略)その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

この条文により、AさんとCさんのどちらが所有権を確定的に手に入れるかは、「先に登記を備えた方が勝つ」というルールで決まります。

要件

したがって、Cさんが民法96条3項によって完全に保護されるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 詐欺の事実について善意であり、かつ過失がないこと(民法96条3項の要件)
  2. それに加えて、不動産の所有権移転登記を備えていること(民法177条の要件)

単に善意であるだけでは、登記を備えている(または取り戻した)元の所有者Aさんには対抗できない、というのが判例・通説の考え方です。

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