民事訴訟における「証明予定事実」の追加・変更は、訴訟の進行状況や攻防の展開に応じて、柔軟に行うことが可能です。しかし、無制限に認められるわけではなく、適切な時期と方法で行う必要があります。以下にその手続きの概要と注意点を解説します。
1. 証明予定事実とは?
証明予定事実とは、当事者が準備書面などにおいて、自らの主張を裏付けるために、証拠(書証、人証など)によって証明しようとする具体的な事実のことです。準備書面には、通常、以下の事項を記載します。
- 主張する事実(主要事実・間接事実など)
- 各事実を証明するための証拠(立証趣旨)
- 証明予定事実
これらを明らかにすることで、争点を明確にし、証拠調べを効率的に進めることを目的としています。
2. 追加・変更の手続き
証明予定事実の追加・変更は、主に準備書面を裁判所に提出し、相手方に送付することによって行います。
手続きの流れ:
- 追加・変更の必要性の検討:
- 相手方の反論を受け、新たな主張や反証が必要になった場合。
- 訴訟進行中に、新たな証拠を発見した場合。
- 主張をより明確にするため、あるいは整理するために変更が必要な場合。
- 準備書面の作成:
- 新たに追加する証明予定事実、または変更する証明予定事実を具体的に記載します。
- なぜ追加・変更が必要になったのか、その経緯や理由を簡潔に説明することが望ましいです.
- 追加・変更した事実に対応する証拠(書証、証人など)も明確にします。
- 裁判所への提出と相手方への送付:
- 作成した準備書面を、定められた期限までに裁判所に提出します。
- 同時に、相手方(または相手方代理人)にも同じ準備書面を送付(直送)します。
- 口頭弁論または弁論準備手続期日での陳述:
- 次回の口頭弁論期日や弁論準備手続期日において、提出した準備書面の内容を「陳述します」と述べることで、正式に訴訟資料となります。
3. 追加・変更における注意点
証明予定事実の追加・変更は、当事者の権利として認められていますが、以下の点に注意が必要です。
時機に遅れた攻撃防御方法の却下
訴訟の進行を不当に遅延させると判断されるような、あまりに遅い段階での追加・変更は、「時機に遅れた攻撃防御方法」として、裁判所の判断で却下される可能性があります(民事訴訟法第157条)。
特に、弁論準備手続が終結した後や、証人尋問が間近に迫った段階、あるいは結審直前での大幅な追加・変更は、相手方の防御の機会を奪い、審理を著しく遅延させるため、認められない可能性が高くなります。
変更の範囲と理由の明確化
単なる表現の修正や些細な追加であれば問題になることは少ないですが、主張の根幹に関わるような大幅な変更や追加を行う場合は、なぜその時期に提出する必要があるのか、合理的な理由を裁判所に説明できるようにしておくことが重要です。
訴えの変更との違い
証明予定事実の追加・変更は、あくまで「請求の理由」を構成する事実の追加・変更です。これに対し、請求の趣旨(例えば、請求金額の増額など)や訴訟物そのものを変更する場合は、「訴えの変更」(民事訴訟法第143条)という、より厳格な要件が課された別の手続きが必要となります。
まとめ
証明予定事実の追加・変更は、準備書面を通じて行うのが一般的です。訴訟の状況に応じて柔軟に対応できますが、審理の進行を不当に遅らせないよう、適切な時期に行う必要があります。特に、訴訟の終盤での大幅な追加・変更は、時機に遅れた攻撃防御方法として却下されるリスクがあるため、計画的に訴訟を遂行することが肝要です。