訴状における「請求の趣旨」と「請求を理由づける事実」は、訴訟の核心をなす2つの重要な部分です。これらは、原告が裁判所に何を求め、なぜそれが認められるべきかを明確にするためのものです。


請求の趣旨

請求の趣旨は、訴訟の結論部分であり、原告が裁判所に求める判決内容を簡潔に記載する部分です。「何をどうしてほしいのか」という最終的な要求を明確に示します。

  • 役割: 裁判所がどのような判決をすれば原告の勝ちとなるのか、そのゴールを明確に設定します。被告にとっても、原告が何を要求しているのかを正確に把握するための最も重要な部分です。
  • 記載内容: 通常は、非常に定型的で法律的な言葉遣いで書かれます。例えば、以下のような形式です。
    • 金銭請求の場合: 「被告は原告に対し、金100万円及びこれに対する令和〇年〇月〇日から支払済みまで年〇パーセントの割合による金員を支払え。」
    • 土地の明渡し請求の場合: 「被告は原告に対し、別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。」
    • 所有権確認請求の場合: 「別紙物件目録記載の土地が原告の所有に属することを確認する。」
  • ポイント:
    • 明確かつ簡潔に: 誰が、誰に対し、何を求めるのかを特定し、過不足なく記載する必要があります。
    • 一義的であること: 解釈の余地がないように、明確な表現を用います。
    • 強制執行の基礎: 請求の趣旨に記載された内容が、勝訴判決の主文となり、将来の強制執行の基礎となります。そのため、極めて正確な記述が求められます。

請求を理由づける事実

請求を理由づける事実は、訴訟のストーリー部分であり、「請求の趣旨」で述べた要求がなぜ法的に認められるべきなのか、その具体的な根拠となる事実を時系列などに沿って詳しく説明する部分です。これは「請求原因事実」とも呼ばれます。

  • 役割: 請求の趣旨を裏付けるための具体的な物語を裁判所に提示します。原告の主張が、特定の法律要件(例えば、貸金返還請求なら「お金を貸した事実」と「返済の約束をした事実」)を満たしていることを、事実を積み重ねて証明する役割を担います。
  • 記載内容:
    • 当事者: 誰と誰の間の話なのか(原告・被告)。
    • 日時と場所: いつ、どこで起こった出来事なのか。
    • 具体的な経緯: 何がどのように発生したのか。例えば、契約であれば契約締結の経緯、不法行為であれば事故の状況などを具体的に記述します。
    • 権利や法律関係の発生原因となる事実:
      • 貸金返還請求の例:
        1. 〇年〇月〇日、原告は被告に対し、100万円を貸し渡した(金銭消費貸借契約)。
        2. 返済期限は〇年〇月〇日と合意した。
        3. しかし、被告は返済期限を過ぎても返済しない。
  • ポイント:
    • 「5W1H」を意識: いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにしたのかを明確に記述します。
    • 要件事実を意識: 主張する権利(例えば貸金返還請求権)が法的に認められるために必要な事実(要件事実)を漏れなく記載する必要があります。
    • 証拠との関連性: ここで主張する事実は、後に証拠(契約書、念書、メールなど)によって裏付けられる必要があります。

まとめ:二つの関係性

「請求の趣旨」と「請求を理由づける事実」は、車輪の両輪のような関係にあります。

請求の趣旨 (結論)請求を理由づける事実 (理由)
役割ゴールを示すゴールに至る道のりを説明する
内容「被告は~せよ」という命令形の短い文章物語形式の具体的な事実の記述
「100万円支払え」「いつ、どこで、100万円を貸した」という事実

訴状を作成する際には、まず「請求の趣旨」というゴールを明確に設定し、そのゴールを法的に正当化するために必要な事実を「請求を理由づける事実」として詳細に記述していく、という流れになります。この二つが論理的に結びついて初めて、説得力のある訴状となります。

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