自己株式取得とは
自己株式取得とは、株式会社が発行した自社の株式を、その会社自身が株主から買い戻し、保有することを指します。俗に「金庫株」とも呼ばれます。
自己株式取得手続の要件
自己株式取得の方法は多岐にわたり、それぞれで必要な手続きが異なります。主な取得方法は以下の通りです。
市場取引による取得
上場企業が公開市場で自社株式を購入する方法で、最も手軽です。
取締役会の決議が必要とされます。
インサイダー取引規制の対象になるため、未公表の重要事実がある場合は取得が制限されることがあります。
欠点としては、短期間に大量の株式を取得すると株価が大きく変動する可能性があること、また、取得金額や期間が不透明になりがちであることが挙げられます。
公開買付け(TOB)による取得
株主に対し、取得価額と取得期間を事前に告知し、市場外で株式を売買する方法です。
市場価格に影響を与えずに特定の期間に大量の株式を取得できるメリットがあります。
非上場企業でもこの方法で自己株式を取得することが可能です。
特定の株主からの取得(相対取引)
特定の株主と直接交渉して株式を買い戻す方法です。非上場企業で多く用いられます。
この場合、他の株主との公平性を保つため、買主追加請求の通知、株主総会での特別決議、取締役会での決定、株主への通知、株式譲渡の申し込み・承諾といった厳密な手続きが必要です。
株主総会では、取得株式数、取得価額、取得期間などの承認を得る必要があります。
すべての株主からの取得
株主全員に株式の譲渡申し込みの機会を与える方法です。
子会社からの取得
子会社からの自己株式取得は、株主総会ではなく取締役会の承認で可能です。その他の要件 自己株式取得には、財源規制という重要な制限があります。取得できる金額は分配可能額の範囲内に制限されており、この分配可能額は剰余金から算出されます。この規制に違反した場合、取得自体が無効となる可能性があり、取締役が法的責任を負うこともあります。
自己株式取得の効果
自己株式を取得する目的は多岐にわたり、実施によって期待される効果も様々です。
株主への利益還元
自己株式の取得は、発行済株式数を減少させるため、1株当たりの利益や価値が向上し、株主への利益還元につながります。
株価の上昇
発行済株式数が減ることで、1株当たりの価値が上昇するため、株価の上昇が期待できます。
特にROE(自己資本利益率)やPER(株価収益率)の改善にもつながり、投資家からの関心が高まる効果もあります。
敵対的買収の防止
自社の持ち株比率が上昇するため、敵対的買収者の株式取得割合が低下します。買収に必要な資金も増加するため、買収のハードルが上がります。
事業承継対策
中小企業において、後継者が相続税の納税資金を確保するために、会社が後継者の株式を買い取る形で自己株式を取得することがあります。
これにより、後継者の経済的負担を軽減し、スムーズな事業承継を促すことができます。
また、自己株式は議決権を持たないため、取得することによって経営承継者の議決権割合(支配力)を高める効果もあります。
財務体質の改善
株式数が減少することで、配当金支払いの総額も減少する可能性があり、企業の財務体質が改善されることが期待できます。
M&Aの対価としての利用
自己株式をM&Aの買収対価として利用することができます。
ストックオプションへの活用
従業員などに報酬として付与するストックオプションの株式を自己株式から供給することが可能です。
自己株式取得の注意点
自己株式取得は多くのメリットがある一方、資金繰りの悪化や自己資本比率の低下、また取得した株式の処分による株価下落のリスクも存在します。そのため、綿密な資金計画と専門家の助言を得た上で慎重に進めることが重要です。