窃盗未遂罪は、窃盗の「実行の着手」があったものの、財物の取得(既遂)に至らなかった場合に成立します。

つまり、成否を判断する最も重要なポイントは、いつ「実行の着手」があったと評価されるかです。


窃盗未遂罪とは?

窃盗未遂罪は、刑法第243条で規定されています。

刑法第243条 第235条(窃盗)…の罪の未遂は、罰する。

窃盗罪が「完成(既遂)」するのは、他人の財物を自己の支配下に移した時点です。この完成に至る前段階であっても、窃盗という危険な行為に乗り出した時点で処罰の対象となるのが窃盗未遂罪です。


ポイントは「実行の着手」

「実行の着手」とは、単なる準備行為を超えて、窃盗という結果を生じさせるための直接的で具体的な危険性のある行為を開始した時点を指します。

判例では、「財物に対する他人の支配を排除して、自己の支配に移すことを目指す、客観的に見て危険性が認められる行為」を開始した時とされています。

具体例で見る「実行の着手」

以下に、窃盗未遂罪が成立するか、まだ準備段階で成立しないかの具体例を挙げます。

窃盗未遂罪が成立する可能性が高いケース

  • 住居侵入・物色: 夜間に他人の家に侵入し、金品を物色し始めたが、何も見つからなかった、あるいは家人に見つかり逃走した。
    • 理由: 家に侵入し物色する行為は、財物の支配を奪うための直接的な危険行為です。
  • スリ・置き引き: 他人のポケットやバッグに手を入れたが、財布を抜き取る前に気づかれた。
    • 理由: 財物に直接接触しようとする行為そのものが「着手」と見なされます。
  • 自動車・バイク盗: 自動車のドアをピッキングしようとした、あるいはバイクのエンジンを直結しようとしたが、失敗した。
    • 理由: 乗り物の占有を奪うための具体的な行為を開始しています。
  • 万引き: 店の商品を自分のカバンやポケットに入れたが、店員に見つかり店の外に出る前に捕まった。
    • 理由: 商品を店の支配下から離脱させようとする隠匿行為が「着手」にあたります。

窃盗未遂罪が成立しない(準備段階と見なされる)ケース

  • 盗みに入る目的で、他人の家の周りをうろついていた。
  • ピッキングツールや手袋、ロープなどを購入・準備した。
  • 盗みに入るための下見をしていた。

「中止犯」による刑の減免

窃盗の実行に着手したものの、自分の意思で犯行をやめた場合、「中止犯(中止未遂)」(刑法第43条)が成立します。

  • : 家に侵入したものの、良心がとがめて何も取らずに自ら家を出た。

この場合、刑が必ず減軽または免除されます。

一方で、誰かに見つかったり、警報が鳴ったりしたために逃げた場合は「障害未遂」といい、このような刑の減免はありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA