最高裁平成8年11月12日判決
相続人が、被相続人の占有を相続により承継しただけでなく、新たに相続財産を事実上支配し、その占有に所有の意思があったとみられる場合には、新権原により自主占有をはじめたものとみるべきとしています。
言い換えると、相続人が相続によって占有を承継しただけでなく、客観的に見て相続人が自分のものとして相続財産を占有していると判断できる場合に、「新たな権原」が認められ、自主占有が認められるということです。
民法185条と「新たな権原」。
民法185条1は、占有者が占有の性質を変更するための要件を定めています。
その要件の一つが「新たな権原」により、さらに所有の意思をもって占有を始めることです。
「新たな権原」とは、自主占有を外形的に基礎づける原因のことで、自主占有になるのが普通だといえる外形的な事情を指します。
例えば、車を借りていた人が貸主からその車を買い取った場合、その売買が「新たな権原」となり、他主占有から自主占有に変わります。
相続と「新たな権原」
相続によって新たに相続財産を事実上支配することにより、これに対する占有を開始した場合において、その占有が所有の意思に基づくものであるときは、「新たな権原により」、相続人は自主占有をするに至ったと解されます。
相続人が、被相続人の占有を相続により承継しただけでなく、新たに当該不動産を事実上支配することによって占有を開始した場合において、その占有が所有の意思に基づくものであるときは、民法185条にいう「新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始め」たとして、自主占有への転換が認められます。
ただし、相続という事実だけでは、外部からは分かりにくいため、所有者がそれを認識するのは困難です。そのため、相続人が相続した不動産を事実上支配することによって占有を開始し、占有に所有の意思があると見られる場合に、「新たな権原」による占有となりえます。