許可留保は「裁量権の逸脱・濫用」と「不作為の違法」で違法に
産業廃棄物処理施設の設置許可を申請したにもかかわらず、行政が許可を不当に「留保」する場合、その留保が違法と判断される主要な要件は、行政の裁量権の逸脱・濫用にあたる場合と、行政不作為の違法が成立する場合の二つに大別されます。
裁量権の逸脱・濫用による違法
都道府県知事などの許可権者は、産業廃棄物処理施設の設置許可申請に対して、専門的・技術的な見地から許可するか否かを判断する広い裁量権を持っています。しかし、その裁量が無制限に認められるわけではありません。
判例によれば、行政の判断が以下のいずれかに該当する場合、裁量権の範囲を逸脱または濫用したものとして違法とされます。
- 事実誤認: 許可の判断の基礎とした事実に誤りがある場合。
- 考慮すべき事項の不考慮・考慮すべきでない事項の考慮: 廃棄物処理法が定める要件(施設の構造や申請者の能力など)以外の、例えば不当な政治的圧力や、法的に関連のない住民感情のみを理由に許可をしない場合。
- 判断過程の不合理: 事実に対する評価が明らかに合理性を欠き、社会通念に照らして著しく妥当性を欠くと認められる場合。
- 具体的には、申請が廃棄物処理法に定められた全ての要件(例えば、施設の技術上の基準への適合、申請者の経理的基礎や技術的能力)を満たしているにもかかわらず、客観的かつ合理的な理由なく不許可としたり、許可を留保し続けたりするケースがこれに該当します。
行政不作為の違法による違法
申請に対して、許可・不許可の処分をせず、単に放置する「留保」は、行政不作為として違法性が問われます。これは行政事件訴訟法に定められる「不作為の違法確認訴訟」の対象となります。
不作為の違法が成立するための要件は以下の通りです。
- 法令に基づく申請がなされていること: 申請者が、廃棄物処理法に定められた様式と手続きに従って、適法な設置許可申請を行っていることが前提です。
- 行政庁が何らの処分もしていないこと: 申請に対して、許可、不許可、あるいは申請書の補正を求めるなどの応答が一切ない状態を指します。申請書を一方的に返戻するなどの事実上の審査拒否も含まれる場合があります。
- 相当の期間が経過したこと: 申請から一定の合理的な期間が過ぎても処分がなされないことが必要です。この「相当の期間」は法律で一律に定められていませんが、行政手続法が定める標準処理期間(多くの自治体で60日程度と設定)が一つの目安とされます。これを大幅に超えて理由なく放置されている場合、違法な不作為と判断される可能性が高まります。
過去の裁判例では、行政指導を継続していることを理由に長期間にわたり処分をしなかった知事の対応を「不作為の違法」と断じたものがあります。申請を受け付けた以上、行政は審査を開始し、一定期間内に応答する義務があるとされています。
申請者は、不作為の違法確認訴訟とあわせて、許可を出すよう求める「義務付け訴訟」を提起することで、具体的な救済を求めることが可能です。