故意の認定とは?

故意の認定とは、ある行為をした人が、その行為から特定の結果が発生することを「わかっていて、それでも構わない」と思っていたかどうかを、客観的な証拠に基づいて判断することです。

人の心の中は直接見ることができないため、裁判などでは、行為者の内心(故意)を様々な状況証拠から推測(推認)していきます。これは、特に刑法で犯罪の成立を判断する際や、民法で損害賠償の責任を判断する際に、非常に重要なプロセスとなります。


刑法における故意の認定

刑法では、原則として「故意」がなければ犯罪は成立しません(過失犯の処罰規定がある場合を除く)。故意は、単に「知っていた」というだけではなく、結果の発生を容認する意思も必要とされます。

故意の種類

故意には、その意思の強さによって大きく2つのレベルがあります。

  1. 確定的故意 行為者が、自分の行為によって犯罪結果が確実に発生すると認識している場合です。
    • : 相手の心臓を狙ってナイフで刺す場合、「相手が死ぬ」という結果を明確に認識しているため、殺人の確定的故意が認められます。
  2. 未必(みひつ)の故意 結果の発生が確実ではないと認識しつつも、「それでも構わない」「そうなっても仕方がない」と結果の発生を容認している場合です。過失との区別が難しく、裁判でよく争点になります。
    • : 高速道路で「前の車を煽ってやろう」と考え、極端な幅寄せを繰り返した結果、相手が事故を起こして死亡した場合。「死亡するかもしれない」と認識しつつ、「そうなっても構わない」という意思があれば、殺人の未必の故意が認定される可能性があります。

未必の故意と「認識ある過失」の違い

「未必の故意」とよく比較されるのが「認識ある過失」です。両者は結果が発生する可能性を認識している点で共通しますが、その後の心理状態が決定的に異なります。

未必の故意認識ある過失
心理状態「結果が発生するかもしれないが、それでも構わない「結果が発生するかもしれないが、自分は大丈夫だろう
意思結果の発生を認容している結果の発生を認容しておらず、回避できると信じている
猛スピードで交差点に進入。「人をはねるかも。でも構わない」猛スピードで交差点に進入。「人はいないはず。大丈夫だ」

どうやって故意を認定するのか?

裁判所は、以下のような客観的な事実を総合的に考慮して、行為者の内心(故意)を推認します。

  • 凶器の有無・種類・用法: 殺意を認定する場合、殺傷能力の高い凶器を使っているか、急所を狙っているかなどが重視されます。
  • 攻撃の部位・回数・強さ: 身体の重要な部分(頭部、胸部など)を、執拗に何度も強く攻撃していれば、殺意が推認されやすくなります。
  • 犯行前後の言動: 「殺してやる」といった発言や、犯行後に証拠隠滅を図ったり、救護活動を一切しなかったりといった行動は、故意を裏付ける事情とされます。
  • 動機の有無: 強い怨恨など、犯行に至る明確な動機があれば、故意が認められやすくなります。
  • 当事者間の関係性: それまでの両者の関係も考慮されます。

民法における故意の認定

民法上の不法行為(民法709条)でも故意は問題となります。民法における故意は、「自分の行為が他人の権利を侵害することを知りながら、あえてそれを行う」心理状態を指します。

刑法ほど厳密な分類はされませんが、故意による不法行為は、過失によるものよりも重い責任を問われることがあります。

  • 慰謝料の増額: 故意による権利侵害は、被害者の精神的苦痛が大きいと判断され、慰謝料が高額になる傾向があります。
  • 損害賠償の範囲: 故意の場合、通常では考えられないような損害(相当因果関係が認められにくい損害)についても、賠償責任が認められることがあります。

民法においても、故意の認定は行為者の言動や行為の態様といった客観的な事情から行われます。

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