〔第1問〕(配点:50)
日本国籍のA男と甲国籍のB女は、婚姻していたが、平成16年に離婚をした。その際、Aは、AB間の嫡出子C(平成7年生まれ、日本国籍)の親権者となり、Cと共に日本で生活するようになった。その後、Aは、日本に在住して事業を営んでいた甲国籍のD女と親しくなり、平成19年にDと婚姻し、以後、Cを含め3人で、日本で暮らしてきた。しかし、Dは、平成29年、不幸にも事故に遭い、亡くなってしまった。突然のことであったので、Dの遺言はないが、Dが所有していた不動産が日本に残されている。
以上の事実を前提とし、甲国の国際私法及び民法は次の①から⑦の趣旨の規定を有しているものとして、以下の設問に答えなさい。なお、各問は独立した問いであり、全ての問いにおいて、反致及び国際裁判管轄権については検討を要しない。
【甲国国際私法】
① 婚姻の効力は、夫婦の常居所地法が同一であるときは、その法による。
② 出生及び準正による嫡出親子関係の成立は、婚姻の効力の準拠法による。
③ 本法各条に定めるもののほか、親族関係の成立及びこれによって生ずる権利義務は、当事者の本国法による。
【甲国民法】
④ 夫婦が婚姻中に生まれた子は、その間の嫡出子と推定する。
⑤ 親が再婚した場合、前婚の子は、後婚の嫡出子としての法的地位を取得する。
⑥ 嫡出子及び配偶者は、第1順位の相続人である。
⑦ 遺産分割前の相続財産は、共同相続人の合有とし、共同相続人全員の同意がなければその持分を処分することができない。
〔設問1〕
日本の裁判所において、Dを被相続人とする遺産分割(以下「本件遺産分割」という。)を行うこととなった。本件遺産分割を行う前提としてのDC間の親子関係の成否を、準拠法の決定過程を明らかにしつつ、論じなさい。
〔設問2〕
本件遺産分割において、DC間の親子関係の成否に関する準拠法が甲国法になるとする。
甲国においては、甲国民法⑤の規定が平成22年12月31日をもって廃止され、かつ、それまでに甲国民法⑤により発生した親族関係は同日をもって消滅する、とする法改正がなされた。
以上の経緯を前提にすると、Cは、Dの相続人になるか。
〔設問3〕
CがDの相続人になるとする。
Dが所有していた日本に所在する不動産につき、Cは、本件遺産分割が行われる前に自らの持分を、他の共同相続人の同意を得ずに、日本の会社Eに売却し、その旨の持分移転登記がなされた。その後、Cが、甲国民法⑦を理由として、この売買契約は無効であると主張し、Eに対しその登記の抹消を請求する訴えを日本の裁判所に提起した。この請求は認められるか。準拠法の決定過程を明らかにしつつ論じなさい。
〔第2問〕(配点:50)
日本に在住する日本人Xは、絵画の収集を趣味としていた。Xは、甲国に旅行に行った際、たまたま訪れた画商Yの店で、甲国では著名な画家Pの作品(以下「本件絵画」という。)を見付けた。
Xは、本件絵画を気に入り、Yに対し、「これを日本の自宅に飾りたい。」と言い、価格の交渉をし、その交渉もまとまったことから、甲国の公用語ではなく英語で記載された契約書に、Yと共に署名した(以下、この契約書により締結された売買契約を「本件売買契約」という。)。この契約書には、国際裁判管轄権及び準拠法に関する定めはなく、特定の国の法の条文への言及もなく、特定の国の法に特有な法律用語も使われていない。また、Yは、個人で事業を営んでおり、甲国に在住し、かつ、甲国に営業所を有する画商であって、日本には営業所及び財産を有さず、日本への渡航歴もない。
以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各問は独立した問いである。
〔設問1〕
Xは、Yに対し本件絵画の代金を支払い、本件絵画を日本に持ち帰った。ところが、その後、Xが、甲国に在住する甲国絵画の専門家に問い合わせたところ、本件絵画はPの作品ではなく偽物であるとの回答を得た。そこで、Xは、Yに対して、本件売買契約は無効であるとして、本件絵画の代金の返還を求める訴え(以下「本件訴え」という。)を日本の裁判所に提起した。
〔小問1〕
本件訴えに関する国際裁判管轄権について論じなさい。
〔小問2〕
本件訴えについて日本の裁判所に国際裁判管轄権が認められるとして、本件売買契約の有効性に関する準拠法はいずれの国の法か。
なお、本件売買契約の方式については検討を要しない。
〔設問2〕
甲国民法には、当事者間における動産の所有権の移転については、売買契約だけでは足りず、その引渡しが必要である旨の定めがある。本件絵画については、甲国において、XY間において本件売買契約が有効に成立したが、その際、本件絵画の引渡しまでは行われず、日本で本件絵画の引渡しが行われることとなった。そこで、Yは、本件絵画について日本に向けて船便での配送の手配をした。
その後、Yは、Zから、本件絵画をXより高額で買い取りたいとの申出を受けたことから、本件絵画を取り戻したいと考えるに至った。
そこで、Yは、本件絵画の引渡しがなされていないことを理由として、本件絵画の所有権確認の訴えを日本の裁判所に提起した。この訴えの口頭弁論終結時において、本件絵画は、日本に向けて公海上を航行中の船舶に積載されている。この請求は認められるか。準拠法の決定過程を明らかにしつつ論じなさい。
なお、この訴えに関する国際裁判管轄権については検討を要しない。

出題趣旨

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