第1問
 18歳のAは、唯一の親権者で画家である父Bに対し、真実はバイクを買うためのお金が欲しかったのに、知人からの借金を返済するためにお金が必要であるとうそをついて、金策の相談をした。この事案について、以下の問いに答えよ。なお、 各問いは、独立した問いである。
1 Bは、Aに対し、Aの借金を返済する金銭を得るために、Bが描いた甲絵画を、これまで何度か絵画を買ってもらったことのある旧知の画商Cに売却することを認め、売却についての委任状を作成し、
Aに交付した。しかし、その翌日Bは、気が変わり、Aに対して、「甲絵画を売るのはやめた。委任状は破棄しておくように。」と言った。ところが、その後、Aは、Bに無断で、委任状を提示して、甲絵画をCに50万円で売却した。この場合、Bは、Cから、甲絵画を取り戻すことができるか。
2 Bは、かねてからAがその所有する乙自動車を売却したいと言っていたのを幸いとして、その売却代金を自己の株式購入の資金とするため、Aの代理人として、Dに対し、乙自動車を60万円で売却し た 。こ の 場 合 、A は 、Dから乙自動車を取り戻すことができるか。
 また、Bが、以前A名義の不動産を勝手に売却したことがあったことなどから、Aの伯母の申立てにより、家庭裁判所において、乙自動車の売却の1か月前に、親権の喪失の宣告がされ、確定していたのに上記のような売却をしたときはどうか。

答案骨子

答案作成手順



第2問
 被相続人Aは、A名義の財産として、甲土地建物(時価9000万円)、乙マンション(時価6000万円)及び銀行預金(3000万円)があり、負債として、Bから借り受け た3000万円の債務があった。
 Aが死亡し、Aの相続人は嫡出子であるC、D及びEだけであった。C、D及びEの間で遺産分割の協議をした結果、甲土地建物及びBに対する負債全部はCが、乙マンションはDが、銀行預金全部はEが、それぞれ相続するということになり、甲土地建物はC名義、乙マンションはD名義の各登記がされ、Eが預金全額の払戻しを受け、Bに遺産分割協議書の写しが郵送された。
 ところが、Cは、Bに対する債務のうち1000万円のみを返済し、相続した甲土地建物をFに売却した。
 この事案について、特別受益と寄与分はないものとして、以下の問いに答えよ。なお、各問いは、独立した問いである。
1 Bに対する債務に関するB、C、D及びE間の法律関係について論ぜよ。
2 乙マンションは、Aが、死亡する前にGに対して売却して代金も受領していたものの、登記はA名義のままになっていた。この場合、Dは、だれに対し、どのよう な請求をすることができるか。

答案骨子

答案作成手順

第1 設問1について
1 BのCDEに対する請求
(1)CDEが相続したBに対する3000万の金銭債務は、可分債務(427条)として各人が相続分に応じて1000万ずつBに支払義務を負うことになるが、遺産分割協議の中でCが3000万全額をBに支払う合意がなされているため、Bはこの合意に拘束されてDEには支払を請求できないのかが問題となる。
(2)Bへの債務に対するCDE間の合意は、免責的債務引受にあたるため、Bの承諾がなければ契約は成立しない(472条3項)。したがって、Bは承諾せずにDEに対し債務の履行を請求することができる。承諾した場合には、Cに2000万請求できるが、免責されるDEには請求できなくなる。
   
第2 設問2について
1 Gに対する請求 

(1)相続前にGはAから乙マンションを購入しているが、登記をしていないため、「第三者」に対抗できない。そこで、Dが「第三者」にあたるかが問題となる(177条)。
(2)Dは、相続によってAの地位を承継した包括承継人であるから、「第三者」にあたらない。よって、登記を備えていてもGに対抗できず、乙マンションの所有権を主張できない。

2 CEに対する請求
(1)Dが時価4000万の乙マンションを相続できなかった場合、CEに対し各相続分に応じた担保責任を負う(911条、561条)。具合的には、DはCに2000万、Eに1000万の支払を請求できる。

(2)遺産分割協議の再請求も考えられるが、CがFに相続財産を売却していることから、利害関係の調整で法的安定性を大きく損なうこと、共同相続人に担保責任を負わせて解決を図る手段としたこととの整合性を考えると、再請求は認められないと解する。
                                                       以上

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