国際私法は、国境を越える法律問題(例えば、日本人とアメリカ人の結婚、日本の会社とドイツの会社の契約など)に、どの国の法律を適用すべきかを決定するためのルールです。この適用されるべき法律を「準拠法」と呼びます。
準拠法の決定と適用は、主に以下のステップで進められます。
ステップ1:法律関係の性質決定
まず、目の前にある争いがどのような法律分野の問題なのかを特定します。これを「性質決定」と呼びます。
例えば、問題となっているのは「契約」なのか、「不法行為」なのか、「相続」なのか、「親子関係」なのか、といった分類です。どの分野の問題かによって、次にどのルール(条文)を参照すべきかが決まります。
例:
アメリカ在住の日本人男性と、日本在住のアメリカ人女性が離婚する場合 → 「離婚」の問題
日本の企業がフランスの企業から機械を輸入する契約を結んだが、トラブルになった場合 → 「契約」の問題
ステップ2:連結点の特定
次に、性質決定された法律関係に最も密接に関係する国・地域(法域)を特定するための「手がかり」を探します。この手がかりを「連結点(または連結素)」と呼びます。
日本の国際私法のルールである「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」)では、法律関係ごとにどの連結点を使うかが定められています。
主な連結点の例:
- 当事者の国籍(国籍法主義)
- 当事者の住所または居所(住所地法主義)
- 法律行為が行われた場所(行為地法)
- 目的物(不動産など)の所在地(物体の所在地法)
- 当事者が選択した場所(当事者自治の原則)
例:
- 離婚の場合(通則法27条):夫婦の同じ本国法 → 同じ常居所地法 → 最も密接な関係がある地の法、というように段階的に連結点が定められています。
- 契約の場合(通則法7条):原則として当事者が選択した法が準拠法となります(当事者自治の原則)。
ステップ3:準拠法の決定
ステップ2で特定した連結点が、具体的にどの国を指し示すかを確定し、適用すべき準拠法を決定します。
例:
- 前述の離婚の例で、夫婦が共にアメリカに住んでいる(同じ常居所地)場合、連結点は「アメリカ」となり、アメリカの法律(州によっては州法)が準拠法となります。
- 契約の例で、当事者が「スイス法を適用する」と合意していた場合、スイス法が準拠法となります。
ステップ4:準拠法の適用と例外
最後に、決定された準拠法(外国法も含む)の内容を解釈し、具体的な事件に適用して結論を出します。
ただし、機械的に適用すると不都合な結果が生じる場合があるため、いくつかの例外的なルールが存在します。
- 反致(はんち):日本の国際私法によればA国の法律が準拠法となるはずが、そのA国の国際私法によれば「日本の法律を適用せよ」と送り返してくるような場合に、日本の法律を適用するルールです。
- 公序(こうじょ):準拠法となる外国法の内容が、日本の基本的な道徳観や社会秩序(公序良俗)に著しく反するような場合、その適用を拒否することができます。例えば、一夫多妻を認める法律を日本でそのまま適用するようなケースが考えられます。
これらのプロセスを経て、国際的な法律問題における妥当な解決が図られます。