「重要な財産」とは何か
会社の財産の譲受けが「重要な財産」に該当するかどうかは、当該財産の種類、会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、譲受け行為の態様、会社における従来の取扱いなどを総合的に考慮して判断されます。
実務上は、便宜的に総資産の一定割合以上を「重要」と定めることが多いですが、一律に割合だけで判断することは適切ではありません。例えば、帳簿価額が低くてもその会社にとって不可欠な取引先の株式であれば、「重要な財産」に該当する場合があります。
取締役会で、重要性の判断基準となる社内規定(取締役会規則など)を定めておくことが望ましいとされています。
ここで言う「財産」とは、原則として積極的に会社の利益を生み出す「積極財産」を指し、特に工場所有権などの固定資産が該当します。
取締役会の決議の必要性
会社法において、取締役会設置会社では、「重要な財産の処分及び譲受け」は取締役会の決議事項とされています。これは、重要な経営事項について慎重な決定を求めるため、また代表取締役の独断的な行為を防ぐために定められています。日常の業務執行に関する決定は、代表取締役に委任されることが多いですが、重要な財産の処分や譲受け、事業譲渡については、取締役会や株主総会の特別決議が必要です。
取締役会決議がない場合の効力
取締役会の決議を得ないでなされた代表取締役の「重要な財産の譲受け」は、原則として有効です。しかし、取引の相手方が取締役会の決議がないことを知っていた場合、または知ることができた場合には、その行為は無効となります。この場合、無効を主張できるのは原則として会社のみとされていますが、会社以外の者が無効を主張できる特段の事情がある場合は例外的に認められることもあります。
ただし、「事業譲渡」に該当する「重要な財産の譲受け」の場合は、株主総会の特別決議が必要となり、この特別決議がない場合は、譲受会社も無効を主張できるとされています。
事業譲渡とは、単なる財産の譲渡にとどまらず、一定の営業目的のために組織化され、有機的に一体として機能する財産(経営組織、ノウハウ、顧客基盤など)の全体または一部を譲渡し、譲受人が営業者としての地位を承継するような場合を指します。
具体的な対応
もし取締役会の決議がないまま「重要な財産の譲受け」が行われた場合で、相手方がその事実を知っていた、または知り得たのであれば、その契約は無効となる可能性があります。この場合、まずは速やかに相手方に対して無効通知を送ることが考えられます。相手方が争う姿勢を見せた場合は、無効確認訴訟の提起なども選択肢となります。