最高裁の判例では、請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することはできません。ただし、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を当該動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、当該部分の請負代金債権に対して物上代位権を行使できるとしています。
上記判例は、 請負工事を行ったことによって取得する請負代金債権は、仕事の完成のために用いられた材料や労力等に対する対価をすべて包含するものであるから、当然にはその一部が動産の転売による代金債権に相当するものということはできないが、上記特段の事情に当たるため、転売代金債権は「売却」に当たり、物上代位の対象となると判示。
買主が動産の売買代金を支払わない場合、売主はその売買目的物を差し押さえ、競売によって換価し、そこから売買代金を優先的に回収できるというのが本来の制度です。(民311条5号1、321条2、民執190条3)⇒ しかし、そのためは当該動産を執行官に提出するなどの要件が必要になり、実効性が薄いです。また、当該動産が転売されて第三者に引き渡された場合には、もはや行使できません(民333条)4。 ⇒ そこで、実際には物上代位5が問題になることが多いです。
先取特権とは、動産売買において売主の売掛金を保全する手段の一つです。
物上代位とは、売主が売却した動産が転売などによってお金に変わった場合に、売買代金債権の担保のために、形を変えた価値そのものであるお金を請求できる権利です。動産そのものではなく、動産の売却、賃貸、滅失、または損傷によって債務者が受けるべき金銭などに対して行使できます。
例えば、商品がA→B→Cと順次売却された場合、BはCに対して動産を売却したことで売買代金債権を有しており、AはこのBのCに対する売買代金債権を差し押さえることができます。
ただし、動産売買先取特権には抵当権のような公示方法がないため、物上代位権の対象である権利について、その払渡しまたは引渡し前に差押えをすることが必要です。
判例では、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後においては、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないとされています。これは、公示方法が存在しない動産売買の先取特権について、物上代位の目的債権の譲受人などの第三者の利益を保護する趣旨が含まれるためです。