最高裁は、「民法304条11項但書において、…差押をしなければならないものと規定されている趣旨は、先取特権者のする右差押によって、第三債務者が金銭その他の物を債務者に払い渡し又は引き渡すことを禁止され、他方、債務者が第三債務者から債権を取立て又はこれを第三者に譲渡することを禁止される結果、物上代位の目的となる債権…の特定性が保持され、これにより、物上代位権の効力を保全せしめるとともに、他面目的債権の弁済をした第三債務者又は目的債権を譲り受け若しくは目的債権につき転付命令を得た第三者等が不測の損害を被ることを防止しようとすることにあるから、目的債権について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたにすぎないときは、その後に先取特権者が目的債権に対し物上代位権を行使することを妨げられるものではないと解すべきである」と判示しました。債権者が債務者の財産を差し押さえた後でも、動産売買の先取特権者は物上代位権を行使できるとされています。つまり、動産売買先取特権は、一般債権者の差押えよりも優先される場合があります。
物上代位とは
物上代位とは、先取特権、抵当権などの担保権設定者が、その目的物の売却、賃貸、滅失、または損傷によって受けるべき金銭などに対して、その権利を行使できることです。例えば、売買代金、賃貸料、保険金、損害賠償金などがこれに該当します。
物上代位の要件
物上代位を行うには、先取特権者は、代金が支払われる前に(払渡しまたは引渡し前に)差押えを行う必要があります。
先取特権とは?
先取特権とは、特定の債権を有する者が、他の債権者に先立って債務者の財産から弁済を受けることができる権利です。
なぜ一般債権者の差押えは物上代位の行使を妨げないのか?
動産売買先取特権は、売買の目的物やその代金債権に対して強い優先権を持つため。
一般債権者の差押えは、あくまで債権の確保を目的とするもので、特別な優先権を持つものではないため。
注意点
物上代位権を行使するためには、払渡しまたは引渡しの前に差押えをする必要があります。
動産売買先取特権に基づく物上代位においては、債権譲渡も「払渡し又は引渡し」に含まれると解釈される場合があります。
抵当権と異なり、動産売買先取特権には公示方法が存在しないため、物上代位の目的債権の譲受人などの第三者の利益を保護する趣旨が含まれています。
一般債権者の差押えとの優劣
最高裁の判例(最判昭和60年7月19日)では、一般債権者が先に差押えまたは仮差押えをしていたとしても、その後に動産売買の先取特権者が物上代位権を行使することを妨げないとされています。
一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位
一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合、両者の優劣は、一般債権者の差押命令が第三債務者に送達された日時と抵当権設定登記の日時の先後によって決まります。
債権譲渡との関係
動産売買の先取特権者は、物上代位の対象となる債権が譲渡され、第三者への対抗要件が備えられた後は、その債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできません。