原則として、再移送は認められません。
一度ある裁判所から別の裁判所へ事件が移送された場合、移送先の裁判所は、その事件をさらに別の裁判所に移送することはできないと定められています(民事訴訟法第22条第1項)。これは、事件が裁判所間を転々とすることを防ぎ、訴訟の遅延を避けるための規定です。
なぜ再移送は禁止されるのか?
再移送を無制限に認めると、以下のような問題が生じる可能性があるためです。
- 訴訟の遅延: 事件がたらい回しにされ、審理がなかなか始まらない。
- 当事者の負担増: 移送のたびに、当事者は新たな裁判所へ出向く必要が生じるなど、時間的・経済的な負担が増える。
- 裁判所の混乱: どの裁判所が最終的に事件を担当するのかが不確定になり、司法手続が不安定になる。
このような事態を避けるため、移送先の裁判所は、自らが管轄権を有しないと判断した場合でも、あるいは別の裁判所の方がより適切だと考えた場合でも、原則としてその事件を審理しなければなりません。この効力を「移送の拘束力」と呼びます。
例外的に再移送が認められる場合
ただし、この原則には唯一の例外があります。
それは、簡易裁判所から地方裁判所への移送の場合です。具体的には、簡易裁判所に係属している事件について、被告が反訴として地方裁判所の管轄に属する請求(例えば、請求額が140万円を超えるもの)をした場合などが該当します。この場合、相手方の申立てがあれば、簡易裁判所は事件の全部または一部を管轄の地方裁判所に移送しなければなりません(民事訴訟法第274条第2項)。
そして、この規定によって移送を受けた地方裁判所は、さらに別の裁判所に事件を移送することが例外的に認められています(民事訴訟法第22条第2項)。これは、事物管轄(裁判所の種類)を優先するための特別な規定です。
まとめ
| 原則 | 再移送は不可 |
| 根拠 | 訴訟の遅延防止、当事者の負担軽減のため(移送の拘束力) |
| 例外 | 簡易裁判所から地方裁判所へ移送された事件は、さらに移送することが可能 |