共謀共同正犯の訴因を特定するための要件は、被告人が防御権を行使するのに不利益が生じないよう、他の犯罪事実から識別できる程度に具体的に明示することです。これは、刑事訴訟法第256条3項が定める「訴因の明示」の原則に基づいています。
共謀共同正犯は、複数の者が特定の犯罪を実行することを共謀し、そのうちの一部の者が共謀に基づいて実行行為に及んだ場合に成立します。この場合、直接実行行為に関与していない者も共同正犯としての責任を負います
そのため、訴因(検察官が起訴状に記載する、審判の対象となる具体的な犯罪事実)においては、被告人が「いつ、どこで、誰と、何を共謀し、それに基づいて誰がどのように犯罪を実行したのか」が明確にされなければなりません。
判例(最決昭和33年2月26日など)を基に、訴因の特定に必要とされる具体的な要素をまとめると、以下のようになります。

訴因として具体的に記載すべき事項

共謀の事実(被告人の実行行為):共謀共同正犯における被告人の実行行為は「共謀」そのものです。そのため、以下の点を具体的に記載する必要があります。
被告人の役割・寄与: 被告人が共謀の形成・維持において、どのような役割を果たしたか。
共謀の日時・場所: いつ、どこで共謀が行われたか。
必ずしも特定の日時に限定する必要はなく、「〇年〇月〇日から同月〇日の間に」といった幅のある記載も、それ以上特定することが困難な場合には許容されます。
共謀の相手方(共犯者): 誰と共謀したか。
氏名が判明している場合はその氏名を記載します。判明していない場合でも、「氏名不詳者らと」といった形で記載し、被告人の防御に支障がない範囲で特定します。
共謀の内容: どのような犯罪を実行することを取り決めたか。
実行する犯罪の種類(例:窃盗、詐欺など)、目的、手段などを具体的に示します。

    特定の趣旨(なぜ特定が必要か)

    訴因の特定が求められる主な理由は以下の2点です。
    審判対象の限定: 裁判所が審理する範囲を明確にし、訴訟の進行を円滑にするため。
    被告人の防御権の保障: 被告人が「何について告発されているのか」を正確に理解し、それに対して具体的な防御活動(アリバイの主張や、共謀への不関与の証明など)を行えるようにするため。

    まとめ

    共謀共同正犯の訴因の特定は、単に「AとBがC罪を共謀した」と記載するだけでは不十分です。検察官は、起訴状において、①いつ、どこで、誰と、どのような犯罪を、どのように共謀し、被告人がどう関与したか、そして②その共謀に基づき、いつ、どこで、誰が、どのように犯罪を実行したかを、被告人の防御に支障がないレベルで具体的に示す必要があります。この要件が満たされない場合、訴因の特定に欠けるとして、起訴が棄却される可能性があります(刑事訴訟法第338条第4号)。

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