共犯者供述と第三者供述の信用性の違いは、証人尋問の必要性を考える上で極めて重要です。端的に言えば、共犯者の供述は、その内容が真実であるかについて本質的な疑いを内包しているため、反対尋問による徹底的な検証が不可欠だからです。
以下、両者の信用性の違いと、それがなぜ証人尋問の必要性に繋がるのかを解説します。
共犯者供述と第三者供述の根本的な違い
供述の信用性を判断する上で最も重要なのは、供述者が「なぜそう話すのか」という供述の動機です。この点で、共犯者と第三者は全く異なる立場にあります。
| 共犯者 | 第三者 | |
| 立場 | 事件の当事者であり、自らも刑事責任を問われる立場。 | 事件とは直接利害関係のない目撃者など。 |
| 主な供述動機 | 自己の刑を軽くしたい(責任転嫁) 捜査に協力して寛大な処分を得たい 他の共犯者への個人的な感情(裏切り、復讐) | 事実をありのままに伝えたいという正義感 (まれに)個人的な利害や偏見 |
| 信用性の評価 | 本質的に低い。虚偽供述のリスクが常に存在する。 | 原則として高い。ただし、記憶違いや誤認の可能性は考慮される。 |
このように、第三者は事件から独立した立場で目撃した事実を述べるのが基本であるのに対し、共犯者は自らが事件の渦中にいるという点が決定的に異なります。
共犯者には、主犯格の罪をなすりつけたり、自己の役割を矮小化したりすることで、自らの刑事責任を軽減しようとする強い動機が働きがちです。これを「責任転嫁の危険」と呼びます。また、捜査機関に協力的な姿勢を示すことで、起訴猶予や求刑の軽減といった有利な結果を引き出そうとする「情状酌量を求める思惑」も存在します。
これらの動機から、共犯者の供述は、客観的な事実とは無関係に、自己の利益になるように内容が歪められている危険性を常にはらんでいるのです。
なぜ証人尋問が必要不可欠なのか?
共犯者供述が持つこのような本質的な危険性があるからこそ、その供述を証拠として用いるためには、証人尋問、特に「反対尋問」による厳格なチェックが絶対に必要となります。
反対尋問は、被告人やその弁護人が、検察官側の証人(この場合は共犯者)に対して直接質問する手続きです。これは、憲法第37条2項で保障された被告人の極めて重要な権利です。
反対尋問の役割
- 供述の真実性の検証: 反対尋問を通じて、供述内容に矛盾はないか、曖昧な点はないか、記憶は正確かなどを徹底的に問いただします。これにより、供述の信用性そのものを揺るがすことができます。
- 虚偽供述の動機の暴露: 「なぜ、あなたにとって不利になる可能性のある他の共犯者のことを話すのですか?」「捜査官から、話をすれば有利になると言われませんでしたか?」といった質問を通じて、責任転嫁や利益誘導といった虚偽供述の動機や背景を明らかにします。
- 供述の任意性の確認: 捜査段階での取調べにおいて、捜査官による不当な誘導や圧力がなかったかを確認し、供述が本人の自由な意思に基づいているかを吟味します。
もし、共犯者の供述調書だけを証拠として採用し、法廷でその共犯者本人に直接問いただす機会(証人尋問)がなければ、被告人は一方的な言い分に対して何ら反論することができません。これでは、冤罪を生む大きな原因となりかねません。
結論として、共犯者の供述は、その成立の背景に自己の刑事責任を免れたいという強い利害関係が絡むため、第三者の供述とは比較にならないほど信用性に疑問符がつきます。そのため、その内容を吟味し、真実性を検証するための唯一かつ最大の機会である証人尋問(特に反対尋問)は、公正な裁判を実現するために不可欠な手続きなのです。