甲国籍のA女は、1987年に甲国P州で生まれ、その後も2009年まで同州にのみ居住していた。Aの親族は、現在まで同州に居住している。甲国籍のB男は、1987年に甲国Q州で生まれ、その後も2011年まで同州にのみ居住していた。Bの親族は、現在まで同州に居住している。A及びBは、2009年に甲国Q州において、いずれも22歳で婚姻して、Aは同州に転居した。婚姻から約1年後の2010年に同州において、AB間に子C(甲国籍)が生まれた。Cの出生から更に1年間、A、B及びCは同州に居住していた。Bは2009年に同州の大学の日本語学科を卒業後、同州内の地元企業に就職したが、2011年に日本企業に転職し、就業場所が東京となったことから、A、B及びCは同年に来日し、現在まで日本で生活を営んでいる。Aは、日本の大学に甲国語の語学教師として常勤しており、Cは、日本の公立学校に通学している。Cが6歳になる2016年頃から、Bは、A及びCに対して日常的に暴力を振るうようになり、これによりAB間の婚姻関係は実質的に破綻し、AとBは翌2017年から別居して、それ以降はAがCを監護している。A及びBは、それぞれ今後も日本での生活を継続する予定であり、甲国に帰国する意思はない。
 別居から約5年後の2022年に、Aは、Bとの離婚等を求めて、日本の家庭裁判所に調停を申し立てた。その後、調停は不成立となり、Aは、Bの暴行等により婚姻関係が破綻したと主張して、Bを被告として、離婚及びCの親権者をAと定めること、並びに離婚せざるを得なくなったことについての精神的苦痛に対する慰謝料200万円及びBの暴行についての精神的苦痛に対する慰謝料100万円の合計300万円の支払を求める訴えを提起した。
 なお、甲国は、P州、Q州を含む複数の州から成る地域的不統一法国であり、州ごとに民法の内容が異なる。甲国P州民法は、①年齢18歳をもって成年とすること、②離婚をするときは、未成年の子の親権は父母が共同して行う旨の規定を有している。甲国Q州民法は、①年齢20歳をもって成年とすること、②離婚をするときは、未成年の子の親権は父のみが行う旨の規定を有している。また、甲国には、甲国人が甲国内のいずれの州に属するかを示すような属人法の決定基準として用いられる統一的な準国際私法の規則は存在しない。
 以上の事実に加え、本件において日本の裁判所に国際裁判管轄権が認められること及び日本の国際私法の観点からみてAB間の婚姻が有効に成立していることを前提として、以下の設問に答えなさい。

〔設問1〕
 本件においてAB間の離婚が認められるか否かについて、日本の裁判所は、いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさい。

〔設問2〕
 本件においてAB間の離婚が認められるものとする。その場合において、以下の小問に答えなさい。
〔小問1〕
 日本の裁判所は、Cの親権者をAと定めることができるか。準拠法の決定過程を示しつつ、論じなさい。
〔小問2〕
 Aの慰謝料請求について、日本の裁判所は、いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさい。

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