〔第1問〕(配点:50)
甲国籍のA男は甲国において甲国籍のB女と適法に婚姻し、甲国で婚姻生活を営んでいたが、やがてABは別居し、婚姻は事実上破綻状態にあった。AはBを甲国に残したまま10年前(2011年)に仕事のため単身で来日し、以後現在まで日本に居住している。Aは、6年前(2015
年)に、出生以来、日本に居住する日本及び甲国の重国籍者であるC女と日本で知り合った。
以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各問は独立した問いであり、全ての問いにおいて、反致については検討を要しない。
〔設問1〕
AとC(現時点まで、Cは国籍法第14条の国籍の選択をしていないものとする。)は、5年前(2016年)、日本の戸籍管掌者に婚姻の届出をした。その際、Aは、独身であるかのように装うため、婚姻届に添付する書類として、甲国に妻のいることの記載がない偽造の甲国官憲作成名義の書類を使用した。婚姻届が受理された後、AとCは現在までずっと日本で婚姻生活を営んでおり、2017年には子D(日本及び甲国の重国籍)が生まれた。なお、日本の国際私法の観点からみて、AB間の婚姻は現在でも有効に成立していることを前提とする。
〔小問1〕
AC間の婚姻の事実を知ったBが2021年にAC間の婚姻無効の訴えを日本の裁判所に提起した。この訴えについて、日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかについて論じなさい。
〔小問2〕
仮にBによる婚姻無効の訴えについて日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるものとした場合に、Bによる婚姻無効の請求は認められるか。甲国民法が以下に記すような規定を定めていることに加え、甲国民法の規定は配偶者のある甲国人が重ねて婚姻することを禁じているのみならず、配偶者のいない甲国人が既婚者と婚姻することをも禁じているものとして、準拠法の決定過程を明らかにしつつ、論じなさい。
【甲国民法】
① 配偶者のある者は、重ねて婚姻することができない。
② 配偶者のある者が重ねてした婚姻は無効とする。
〔小問3〕
Dの出生に伴って、AとCは日本の戸籍管掌者に嫡出である子としての出生の届出をし、その出生届は受理された。仮にBによる婚姻無効の請求を認める判決が確定した場合に、AC間の婚姻が無効となったことによって、Dは嫡出である子として扱われるか論じなさい。なお、甲国民法は以下に記すような規定を定めている。
【甲国民法】
③ 父母の婚姻について、その無効の判決が確定する前に出生した子は、嫡出である子とみなす。
〔設問2〕
2015年2月にAとBは甲国で適法に離婚した。AB間の離婚から1年が経過した2016年2月に、AとCは、甲国民法の規定に従って、日本に駐在する甲国の領事の面前で婚姻を挙行した(この時点において、Cは国籍法第14条の規定に基づいて、日本の国籍を選択していたものとする。)。この婚姻は日本において有効に成立するか論じなさい。なお、日本の国際私法の観点からみて、AB間の離婚は有効に成立していること、また、AC間の婚姻の実質的成立要件は満たされていることを前提とする。
〔第2問〕(配点:50)
A社は、システムの開発及び販売を業とする甲国の株式会社である。A社は、日本の株式会社J社と甲国の株式会社K社が10年前に共同で設立したものであり、甲国以外に資産や営業所を有していない。
Bは、J社の従業員であったが、A社の設立に際し、J社を退職してA社の取締役に就任した。
Bは、A社の取締役に就任する際に日本から甲国に住所を移した。Bは、甲国以外に資産を有していない。
G庁は、乙国の政府機関である。乙国は、丙国を挟んで甲国と地続きの関係にある。G庁は、Aが、その際には、A社が保有する自動車(以下「本件自動車」という。)を自ら運転し、甲国から丙国を通過して乙国に至る国際高速道路を利用するのが通常であった。
Xは、Bの大学時代の友人であり、出生以来、日本に住んでいる。Xは、かねてより乙国に関心があり、その観光についてBに相談したところ、Bは、その翌月にA社製の最新型システム管理用機械(以下「本件機械」という。)をG庁に納入することになっていたことから、本件機械をG庁に納入する際に本件自動車に同乗してはどうかとXに提案した。この提案を受け、Xは、甲国に渡航し、Bが運転する本件自動車に同乗し、B宅から乙国に向けて出発した。ところが、Bが運転す
る本件自動車は、国際高速道路を進行中、丙国の領域内に入った地点でカーブを曲がり切れずに道路側壁に衝突した(以下「本件事故」という。)。本件事故により、Bは軽傷で済んだものの、Xは重傷を負い、本件自動車に積載していた本件機械も完全に損壊してしまった。Xは、丙国内の救急病院で緊急手術を受けた後、医療環境の整った日本での治療を希望したため、日本に帰国して病院での入院治療を継続した。
Bは、Xに対し、丙国内での緊急手術の費用等については、その支払を任意で行ったが、日本の病院での入院治療費については、Xが自ら日本での入院治療を選択したことを理由に、その支払を拒んでいる。
以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各問は独立した問いである。
〔設問1〕
Xは、本件事故の原因がBの過失によるものであると主張し、Bに対し、本件事故に基づく損害賠償として、日本の病院での入院や治療に要した費用の支払を求める訴え(以下、本設問において「本件訴え」という。)を日本の裁判所に提起した。
〔小問1〕
本件訴えについて、日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかについて論じなさい。ただし、応訴による国際裁判管轄権について論じる必要はない。
〔小問2〕
Bは、本件訴えに対して応訴し、日本の裁判所において、本件事故はBの過失によるものではないと主張して争っている。本件訴えにおいて、XのBに対する損害賠償請求が認められる
か否かについて、日本の裁判所は、いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさい。なお、日本の裁判所の国際裁判管轄権について論じる必要はない。
〔設問2〕
本件自動車は、日本国内に本店を有する日本法人C社が日本国内の工場で製造したものであった。
A社は、本件事故の原因が本件自動車の欠陥にあったと主張し、C社に対し、本件事故に基づく損害賠償として、G庁への本件機械の売却代金に相当する金額の支払を求める訴えを日本の裁判所に提起した。
〔小問1〕及び〔小問2〕のそれぞれの場合において、A社のC社に対する損害賠償請求が認められるか否かについて、日本の裁判所は、いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさい。
なお、日本の裁判所の国際裁判管轄権について論じる必要はない。
〔小問1〕
A社は、甲国の自動車販売会社D社から本件自動車を購入し、甲国内でその引渡しを受けていた。C社は、自社の自動車を甲国内で販売するための契約をD社との間で締結しており、本件自動車は、この契約に基づき、C社からD社に対して甲国内で引き渡されたものであった。
〔小問2〕
甲国は、甲国内で新車として販売される自動車が満たすべき排気ガス等の環境基準について、周辺国よりも厳しい基準を設定していたところ、C社は、甲国の環境基準を満たす自動車を製造しておらず、甲国市場には販路を有していなかった。
C社は、乙国の環境基準を満たす自動車を製造しており、自社の自動車を乙国内で販売するための契約を乙国の自動車販売会社E社との間で締結していたところ、本件自動車は、この契約に基づき、C社からE社に対して乙国内で引き渡され、これをE社が新車として乙国居住者Fに販売したものであった。Fは、その後、本件自動車と共に甲国に転居し、計3年ほど甲国内で本件自動車を使用した後、本件自動車を中古車として甲国の自動車販売会社D社に売却し、甲国内で本件自動車をD社に引き渡していた。
その後、A社は、D社から本件自動車を購入し、甲国内でその引渡しを受けていた。

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