判例の要旨

甲が乙の権利を自己の権利であるとして処分した場合に、乙がこれを追認したときは、民法116条1の類推適用により、その処分は処分時に遡って乙について効力を生じると解するべきである。

事案の概要

権利者でない者が他人の権利を自己の権利として処分した場合に、真の権利者がその処分を追認したという事案です.。例えば、AがBの所有する物を、自分のものとしてCに売却した場合に、Bがその売買契約を追認すると、その売買は有効になる、というものです。

論点

この判例のポイントは、権利者でない者が行った処分行為を、真の権利者が追認した場合、その追認の効力がいつ発生するかという点です。判例は、民法116条の無権代理行為の追認に関する規定を類推適用し、処分時に遡って効力が生じると判断しました。

民法116条

民法116条は、無権代理行為の追認について規定しています。

民法116条:追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない

この規定を類推適用することで、他人の権利の処分における追認も、処分時に遡って効力を生じることになります。

具体例

Aが、Bの所有する絵画を、Bの承諾を得ずに、自己のものとしてCに売却したとします。この場合、Bが後からこの売買を追認すると、その売買契約は、契約時に遡って有効となり、Cは絵画の所有権を取得します。
追認とは、法律行為の効果がない場合に、その行為を有効にする意思表示のことです。

追認の効果

追認には、主に以下の効果があります。

  • 法律行為の有効確定: 取り消すことができる行為を追認した場合、その行為は確定的に有効となり、後から取り消すことができなくなります。
  • 無権代理行為の有効化: 無権代理人が行った法律行為は、本人が追認することで、本人に対して有効となります。
  • 無効行為の新たな行為とみなす: 無効な法律行為を、当事者が無効であることを知ったうえで追認した場合、その追認は新たな行為とみなされます。

追認の限界

追認は万能ではなく、以下のような限界があります。

  • 第三者の権利の保護: 追認によって第三者の権利を害することはできません。
  • 取消原因の消滅: 詐欺や強迫によって取り消しうる行為の場合、その原因が消滅した後でなければ追認できません
  • 制限行為能力者: 制限行為能力者は、行為能力者となった後、または法定代理人の同意を得なければ追認できません
  • 追認の遡及効の制限: 無効な行為を追認しても、原則として遡及効は認められません。ただし、当事者が無効であることを知って追認した場合は、新たな行為とみなされます
  • 取消後の追認: 一度取り消された法律行為は、追認できません

追認の具体例

  • 未成年者の契約: 未成年者が親の同意なく契約した場合、親が追認することで、その契約は有効となります。
  • 無権代理人の契約: 代理権を持たない者が本人を代理して契約した場合、本人が追認することで、その契約は本人に帰属します。

追認の注意点

  • 追認権者: 追認できるのは、取消権者(制限行為能力者、詐欺・強迫を受けた者など)またはその法定代理人です。
  • 追認の方法: 追認は、相手方に対する意思表示によって行います。
  • 法定追認: 一定の事実(債務の履行、権利の譲渡など)があった場合、追認したものとみなされる場合があります(法定追認)。

2020年4月1日より前にされた追認

2020年4月1日より前にされた追認については、改正前の民法が適用されます。

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