不動産に関する「登記請求」と「明渡請求」は、不動産取引や所有権をめぐるトラブルにおいて、中心的な役割を果たす法的手続きです。これら二つの請求は、個別に、あるいは一つの訴訟手続きの中で同時に行われることがあります。

ここでは、それぞれの請求権の内容、典型的なケース、そして法的手続きの概要について解説します。

1. 登記請求とは

登記請求権とは、相手方に対して不動産の登記手続きに協力するよう求める権利のことです。不動産の権利変動(売買、相続など)は、登記をしなければ第三者に対抗(主張)することができません。そのため、登記は非常に重要な意味を持ちます。

主な登記請求の種類
  • 所有権移転登記請求:
    • 典型的なケース: 不動産を売買契約によって購入し、代金も支払ったにもかかわらず、売主が所有権移転登記の手続きに協力してくれない場合。
    • 目的: 買主が、売主に対して登記の名義を自分に移すよう請求します。
  • 抵当権設定登記請求:
    • 典型的なケース: 金銭を貸し付ける際に、担保として不動産に抵当権を設定する契約をしたが、不動産の所有者(債務者など)がその登記手続きに協力しない場合。
    • 目的: 貸主(債権者)が、抵当権の設定登記を行うよう請求します。
  • 抹消登記請求:
    • 典型的なケース: 住宅ローンを完済したにもかかわらず、金融機関が抵当権の抹消登記手続きに協力してくれない場合。
    • 目的: 抵当権などの不要になった登記を抹消するよう請求します。

2. 明渡請求とは

明渡請求権とは、不動産の占有者に対して、その不動産から退去して占有を自分に移すよう(明け渡すよう)求める権利のことです。

明渡請求の根拠

  • 所有権に基づく請求:
    • 典型的なケース:
      • 自分の土地や建物に、権原なく(不法に)占有している人がいる場合。
      • 不動産を購入したが、前の所有者や関係者が立ち退かない場合。
    • 目的: 所有者として、所有権を侵害する占有者に対して明渡しを求めます。
  • 賃貸借契約の終了に基づく請求:
    • 典型的なケース:
      • 賃借人(借主)が家賃を滞納したため、賃貸借契約を解除し、建物の明渡しを求める場合。
      • 賃貸借の期間が満了し、更新もされないのに賃借人が退去しない場合。
    • 目的: 契約関係の終了を根拠に、物件の返還を求めます。

3. 登記請求と明渡請求を同時に行うケース

実務上、これら二つの請求は一つの訴訟で同時に行われることが少なくありません。これを「訴えの併合」と呼びます。

典型的なケース

不動産の買主が、売主に対しては所有権移転登記を求めると同時に、その不動産に居座っている売主や、売主から不法に占有を引き継いだ第三者に対して建物の明渡しを求める場合です。

  • 原告: 不動産の買主
  • 被告: 売主、および/または、現在の占有者
  • 請求内容:
    1. (売主に対して)所有権移転登記手続きをせよ。
    2. (占有者に対して)建物を明け渡せ。

このように併合して訴訟を起こすことで、一つの裁判手続きで紛争の根本的な解決を図ることができます。

4. 法的手続きの流れ

登記や明渡しを求める場合、一般的に以下のような流れで手続きが進みます。

手順内容
1. 専門家への相談不動産に関する法的手続きは極めて専門的です。まずは弁護士や司法書士に相談し、事案の見通しや最適な解決策について助言を得ることが重要です。
2. 内容証明郵便による請求訴訟の前に、相手方に対して請求内容と履行期限を明記した内容証明郵便を送付することが一般的です。これにより、こちらの意思を明確に伝え、交渉による解決の可能性を探るとともに、訴訟になった際の証拠となります。
3. 訴えの提起(訴訟)交渉で解決しない場合、不動産の所在地を管轄する地方裁判所に訴状を提出します。訴状には「請求の趣旨」(判決で求める内容)と「請求の原因」(請求を法的に基礎づける事実関係)を記載します。訴訟提起には、訴額に応じた印紙代や郵便切手代が必要です。
4. 審理口頭弁論期日で、当事者双方が主張と立証(証拠の提出)を行います。裁判所は、提出された証拠などに基づいて事実認定を行います。
5. 判決裁判所が、請求を認めるかどうかの判断(判決)を下します。
6. 強制執行勝訴判決が出ても相手が任意に義務を履行しない場合、判決内容を強制的に実現するための手続き(強制執行)が必要になります。<br>・登記請求の場合: 判決書を法務局に提出し、原告が単独で登記申請を行うことができます。<br>・明渡請求の場合: 地方裁判所の執行官に申立てを行い、強制的に占有者を退去させる「明渡しの強制執行(断行)」を行うことになります。

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